「姫、今日練習見に来る?」
「うん行きたいな」
「本当!やったー頑張んないとね」
私はこの穏やかで優しい人に恋をしている
どこに惚れたと聞かれたら私は即答できる「全部」って
「そういえば孝支セッターだよね!凄いなあ」
「いやいやそんな…新しく入った1年に影山っているんだけどそいつが凄いんだよ!天才っていうかさあ…同じセッターとしては情けないけど俺にはないもの、沢山持ってる」
そういう彼の目には憧れと羨望と少しの嫉妬が混ざっているような気がした。
「でもさ、孝支はその影山くんにないもの持ってるよ?」
「えっなんだろう?」
きょとんとする孝支の制服の襟を強く掴み引き寄せ耳元で囁く
「……あたしは孝支のものじゃないの?」
「………っ!?」
孝支は私を離して耳を押さえ丸くなってしまった
「孝支?」
「姫……くすぐったいから耳はダメだって…」
孝支が耳を弱いこと忘れていた。しかしこうも可愛い反応をされるともう少しいじめたくなるもので
「孝支ー……」
「なに姫……ってわわわ!何するのさちょっ、あは、あははやめっ……ひいいい」
脇とか横腹とかくすぐる場所を思いつく限りくすぐり回る、孝支は床に手を叩いて降参をしているようだが関係ない
「ギブ!ギブってば姫!あはは、は、もう、無理ぃ……」
「あれ、やり過ぎちゃった」
笑いすぎて疲れたのか孝支は気絶してしまったようだ。揺すってみるが起きない
「どうしよう……」
「…何やってるんですか」
「月島くん!いいところに」
突然聞こえた声に振り向くと中学の後輩がいた。そういえばたしか彼もバレー部だったな。てことは孝支とは知り合いだろう。手伝ってもらおうと思ったら月島くんは私たちを蔑むように見つめため息をついた。なんだこいつ
「先輩…学校の廊下でそんなことするなんていい度胸ですね」
「何をいって…あ」
気づいてしまった。普段人通りの少ない廊下。なぜか制服をはだけさせ気絶している男子。その男子の上にいる私
「ち、ちが……!」
「ふざけるなよ月島」
「孝支…!?」
いきなり気絶してたはずの孝支が会話に入ってきた
「…起きてたんだ」
「そんなことどうでもいい。いい?日向とか影山はからかって遊んでもいいけど、姫は駄目だからね」
「あらら…先輩にどんな権限があってそんなこと」
「だってこいつ俺のだから」
「!」
きりっと月島くんを見つめ言い放つ孝支の瞳と言葉にドキッとした、不覚にも心臓が速くなる
「…お邪魔しちゃったみたいですね。どうぞ楽しんでくださーい」
月島くんは手をひらひらさせ去っていった
「お、起きてたの!?」
「ごめん。姫がくすぐるのやめてくれなかったから……」
「え、いやそんな私が悪かったのに」
しょんぼりと肩を落とす孝支に慌てるが彼はすぐに復活した
「にしても月島めー姫をからかうなんて…今日の部活覚えとけよ!!」
「…まあほどほどに」
「あ、忘れるとこだった。姫」
「ん?」
「えい」
「わっ」
「はは、仕返しー待ってるよ。またねっ」
孝支は私の頬に軽く口づけて部活に向かって行ってしまった
私は今もなんだか暖かいような気がする頬を押さえ一人歩きだす
君は知ってるかな
優しい君のちょっと意地悪なとこ、大好きなんだよ
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