悔いはない
※主は護衛武将
恋人関係


「女主、準備できた?」


「半兵衛様!」

名前を呼ばれ振り返る


「はい、全て終わりました」


「良かった。なら今日も俺の護衛頼むよ。」


「任せてください!」


半兵衛様自ら私の激励に来てくれたことが、すごく嬉しい


「……まったく、大丈夫かなあ。無茶だけはしないでね」


半兵衛様は私の頭を撫でる


口調は呆れているが、その目は優しい


私を沢山甘やかしてくれる彼に何か返せるものはないだろうか


「あー…、もうすぐ始まっちゃうね。それじゃ女主、行こう」


「はい」


私は戦へと意識を戻し集中することにした



――――


戦は私たちの優勢だった


相手は数は多いがお世辞にも強いとは言えず、また半兵衛様の策のおかげで楽に勝ち進んでいる


このまま勝てる―誰もがそう思っている

そんな時

「!」


一筋の光が半兵衛様の元へ向かうのを見た


「半兵衛様っ」

私は駆け出していた



鈍い音が響く


背中から強い衝撃を受け、それは私の心臓を貫通している


「ぅあ……」



「女主…女主っ!」



半兵衛様は焦りながら私の顔を覗く



「半…べ、さ」



「口を開かなくていい、待って今手当を…」


話しにくいので、力を振り絞り半兵衛様のお手を掴む



矢が心臓を貫通しているのだ



手当が無駄なこと、半兵衛様はわかっている


この方は、私を助けようとしている


その気持ちが愛しくて嬉しくて涙がでそうになる


ああ、私はあなた様のお役に立てたでしょうか


あなた様と平和な世で共に過ごすことができたならどんなに幸せだろうか


それが叶わぬ願いならば


せめて、せめてこれだけは伝えたい



私は最後の力を振り絞る



私の一生、悔いはない



半兵衛視点―――


何だろうこれは


何が起こっているのだろう


俺の腕の中で横たわる女主は既に虫の息だ


俺を、庇ったから



「女主…」


女主が俺をどこかに行かせないよう手を掴むから強く握りしめた


「はん、べさま……」



たどたどしく彼女は俺を呼ぶ


「女主っ……」


「あな、たの…ために死ねて、本、もうです…」


本当に幸せそうに言うもんだから


俺は何も言えなかった


女主はゆっくりと息絶えた


確かめるようにその心臓に耳をあてるが何も聞こえない


ああ


本当に死んだのだ


彼女は


俺を残して



「あ、ああ…ぅああああああああ!」


涙で彼女が見えなくなる


俺のために死ねて、本望?


随分生意気なこと言うじゃないか


「俺は、君とずっと一緒に」


目の前の女を救うことすらできずに泰平か成せるのか



「…俺としたことが、つい弱気になっちゃったね」


俺と女主のような人を増やさないためにも


早く寝て暮らせる世を作らなきゃ




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