自室で執務を行っていると突然襖が開き女主がずかずかと入ってきた
「高虎、今日は一緒に過ごそう?」
「随分と急だな。まあ予定もないし構わない」
「本当!ありがと。じゃあ早速馬に乗ろう!」
そう言いながら女主は俺を引っ張るから慌ててついていった
「遠出するのか」
「そう」
急かす彼女に釣られるように自分の気持ちも逸っていく
彼女の馬は速く普通なら2日かかる距離を半日で駆け抜ける
青空が流れて行き夕焼けに。その夕焼けが星空になった頃。
着いたと一言呟き馬から降りた女主に自分も続く
「この景色を高虎に見せたかったんだ」
「これは……」
見上げた先にあったのは一面の花畑。月や星に照らされ輝き涼しい風に揺れる花がなんともいえない愛嬌を訴えてくる
「…昔は花など愛でる奴の気がしれなかった。俺にとってはどんなに愛らしい花でもただの食料でしかなかったからな」
「今はどう?」
「…可憐で、守ってやりたいとさえ思う。なぜこんな気持ちになるのかわからない。俺の本質は変わってはいないのに」
「…それはね、高虎に大事なものができたからだと思う」
頬を染めながら俺から離さないその視線を受け止め笑ってやる
「はっ、それがお前だとでも言うのか?」
「違うの?」
自信満々に尋ねる彼女に違うと答えたらどうなるだろう。見てみたい気もするが女主はこの花と同じように可憐で守ってやりたいと思う女性だ。やはり俺が変わったのはこいつのおかげなのだろう
「…違わない。好きだ」
引き寄せようとすると自分から俺の腕に収まってきた。こんなやり取りにさえ愛しいと思う俺は重症だと思う
「高虎…、誕生日おめでとう。産まれてきてくれて…ありがとう」
「……なに?」
「今日高虎の誕生日なんだよ。忘れてたでしょう?」
「ああ…そういえば。ふっ女主が覚えているとは」
「大好き…」
「ああ、俺も」
言葉を途中でやめると拗ねたように俺を睨む女主。その頭を撫でて口元を寄せる
「愛してる」
伝えた瞬間に満面の笑み
何度見ても足りない。見飽きない
俺が護ってやる。その笑顔
女主の笑顔を護るのは俺の役目だからな
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