まどろむ
「おはようございます、女主様」


「おはよう蘭丸、何してるの?」



今日の朝いつもより早く目が覚めて…といってもまだ日が昇る前だけど、二度寝をする気になれず人の気配を感じ庭へ出たら蘭丸がいたのだ。


「蘭は今鍛練をしています」


「素振りだよね?何これ」



「はい。信長様にもっと力をつけろとの御言葉をいただいたので、以来剣に石をつけ素振りをしています」



「…蘭丸は凄いね」



素直にそう思った。見えない努力を続けるのは大変なことで、人の助言を素直に聴き入れるということも簡単ではない。いくら信長に言われたことでも、剣に石なんて刃こぼれしてしまう心配もあるし、続ける気にはなれない



「あ、ありがとうございます…」



蘭丸は照れたのか俯いてしまう


蘭丸はきっと、慣れていないのだ。自分が褒められることに。蘭丸を認めてる人なら沢山いるのに。それを言わないだけで



彼は他人に憧れることで自分を高める人だ


自分に厳しいだろうし、他人からの褒め言葉など気休めでしかないかもしれない


それでも、私は蘭丸を甘やかしたい。甘えてほしいと思った。



だから蘭丸をきつく抱きしめる



「っ!…女主様?」



蘭丸の肩が震えていたから安心させるように背中をさする


すると蘭丸も怖ず怖ずと私の背に手を添えた



「女主、様これは一体?」



「甘えて」



「え」



「もっと甘えていいんだよ」



「女主様……」



蘭丸は、体の力を抜いた



「…では、甘えてもよろしいでしょうか」



「もちろん」



私が肯定すると、蘭丸は顔を真っ赤にしながら見つめてきた



「で、ではその…女主様、ひざ枕をしていただけないでしょうか!!」



「ひざ枕?いいよおいで」



近くの木に座り、膝を叩いてそう言うと蘭丸は少しむっとした顔をしたけどひざに顔をのせてくれた

「女主様、その…」


「ん?」


「やっぱり恥ずかしいです」



「今更?もうしちゃってるんだし気にしなくていいよ」



「で、ですが…!冷静になってみればこれはその男女の関係が行うものでは…」


「蘭丸」



慌てて膝から逃げようとする蘭丸の頭を押さえ自分の方を向かせた


「女主様……」


心なしか潤んで見える彼の瞳は、何かを期待するようにこちらを見つめている


「じゃあ、男女の仲になる?」



「え、え、ええええ!」



蘭丸はこれでもかというくらい顔が赤くなった。湯気でもでるんじゃないだろうか


「蘭と女主様が…」


「うん。私は蘭丸のこと好きだよ」


「それは男として…ですか?」


どこか不安げな蘭丸に、笑顔を向け答える


「もちろん」


途端破顔する蘭丸をやはり可愛いとは思うものの、それと同じくらい異性と意識している自分がいる。


それにどれだけ可愛がっていようと好意を抱いていない男にひざ枕などしない



「女主様、嬉しいです。私もあなた様をお慕いしています」


「ありがとう」



照れている蘭丸の頭を撫でているといつのまにか寝ていた


すやすやと気持ち良さそうに眠る蘭丸につられ私も寝てしまった



後日、その様子を見ていた濃姫様に二人してからかわれたのは別の話。




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