はやく、壊れて

※性悪


歩いていると、反対側からこちらへ向かって歩みを進めている幸村を発見した


幸村は私に気付くと嬉しそうに頬を緩ませ、更に近づいてくる


「こんばんは、女主殿」


「こんばんは、幸村。」


そういってさりげなく幸村の手を握る


幸村は少し戸惑いつつも、目元を染め私を見てくる


「な、なにか……」


可愛いな、なんて思いながら困った顔を作る


「幸村、また言わせるの?私と貴方は同じ武将。身分もなにもないんだから普通に話してよ」


「し、しかし……」


「あーもう!いつまで話してるんですか。私のこと忘れてません?」


幸村の後ろから、頬を膨らませたくのいちが出てきた


「あ、いたの、くのいち」


「いたよ!もうっ、放っておいたら幸村様と二人きりで話すんだから!」


ああもうくのいちってば


「ごめんごめん。相変わらず幸村のこと大好きなんだね」


「えっ」

「そなたは良く働いてくれてる」

「うっ、あ…はい」

くのいちは頬を染め、幸村から足元に目線を逸らした


会話が噛み合ってないことに気付いていない幸村は私に話しかけてくる


「女主殿、もし明日時間があいていたら私と…」


「女主、ちょっといいか」



幸村が話している最中に三成が話しかけてきた


「いいよ。なに?」


「明日一緒に出かけないか。上手い団子屋を見つけたのだよ」

普段あまりない、三成からの誘いだった


「もちろん行く!」

満面の笑みで答えると、三成はあからさまに安心した顔を見せた

「…よし、覚えておけ。後これから鍛練に付き合ってくれないか」

「わかった。行こう」


先に歩きだした三成の後を追う


幸村とすれ違う時、腕をきつく掴まれた

足をとめる


「幸村?」


「……」


呼びかけても話そうとしない

原因は分かる。嫉妬しているのだ、三成に

……仕方ないなあ

私は幸村に近づき耳元で囁く


「今夜、私の家に来て」


その言葉を聞いた幸村は、私を見つめ、嬉しそうに頷いた


私は微笑み、別れをつげ三成の元へゆっくりと歩きだす



私は知っていた


三成の元へ向かった私を、幸村が悲しそうに見つめ続けていることも。

くのいちがそんな幸村を見つめていることも、

幸村との夜の逢瀬を三成が知っていて悩んでいることも。


自然と口元が弧を描く


ああ、楽しい
楽しくてしょうがない!



最初に壊れるのは誰なんだろうか




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