貴女無しでは
ヒロイン死ネタ



さよなら、なんて言えるわけがない


秀吉様を慕っていた三成が死んだ後、残された私は義と愛とは何なのか、わからなくなった

だから……


「兼続に付いていこうと思うの」


「……そうですか」


「寂しい?」


「……いえ」


否定しながらも幸村の目は悲しそうだ


私だってそう


迷わなければずっとこの人に背中を預けていただろう

何よりも安心できるその場所を自分から無くすなんて、苦しいし寂しい



「私より、兼続殿を好いているのですか」


「…そう思ってくれて、構わない」


もちろんそんな訳がない

共にいた時間は数えきれない

兼続のことは好きだけど、あくまで友達、親友だ


でも、幸村に未練なんて残したくない

次の戦、恐らく私は家康に試される

きっと幸村が来るだろう場所に配置される


今のまま幸村と戦ったら、私相手に本気を出さずに死んで行くだろう


あなたには生きてほしい

だから


「あれほどの時間を、共にしました」


「うん」


「女主殿を、とても、お慕いしておりました」


「うん」


「女主殿も、私に愛を囁いてくださいました」


「うん」


「それでも女主殿は、私のもとから兼続殿のもとへ行ってしまわれるのですか」

「……うん」

「…っ、わかりました。行ってください、…どうぞ早く!」


「…またね」


私は幸村を後にして、兼続との待ち合わせ場所に行った


「お前も、不器用な女だな」


「うるさい」

さっき幸村は泣いていた


私も堪え切れずに泣いていた


でも、これでいいんだ


そして、ついに幸村との戦が始まった


「あり?女主じゃん。幸村様を裏切ってよく顔出せたね」

「…あなたに私の気持ちは、わからない」



殺気だっているくのいちを尻目に私は真っ先に幸村へ向かう


馬を全速力で走らせ、ようやく兵たちを鼓舞している幸村を見つけた


「女主殿……」


「久しぶり、幸村」


言うが早いか、私は武器を振り上げ、幸村に襲い掛かる


「くっ……」

幸村も槍を振り回し、私に応戦した

剣と槍がぶつかる、聞き慣れた音がする


「さすが、重たいね」


「あなたの腕も、衰えていないようで」


体勢を崩した瞬間、文字通り一瞬の隙を突かれ落馬した


「あ」


見上げると、私と空の間に幸村がいる


「なぜ……私と共に、」


「ゆき」

村、と呼ぼうとしたら私の心臓を弓が貫いた


幸村の兵が私を射たのだ


「あ……」


「女主殿っ!!」

涙で滲み、幸村の顔が見えない

覚悟していたけど、
私は今ここで死んでいく

なら、最期に言いたい


「ゆ、きむら……」


「声を出してはなりませぬ!」

「馬鹿、私は敵だよ?言わせて。ねぇ、きっと誰よりも幸村のこと好きだったよ、愛してた」


「兼続殿は……」


「あれ嘘。ああでも言わないと幸村が本気になってくれなさそうだから」

私は最後の力を振り絞り幸村の手をとる


「幸村お願い、殺して。幸村の手で死にたいの」


「っ…ぁ、女主殿」


「楽にして 私を」


その言葉に幸村はゆっくり槍を私に振りかざす


「あり…がと、幸せに、なって幸村」


良かった、これで
兼続相手でも本気をだせる

きっと、生きて幸せを見つけてくれる


「女主殿、女主殿……、また生まれ変わることができたら次の世で、次の世こそ共に」


その言葉を最後に、私の意識は途絶えた










女主の亡骸を胸に掻き抱き、そっと呟く



(あなた無しに、幸せなどあるはずがないのに)



TOP

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -