心臓がもちません!






「半兵衛様っ!」



「あ」



ここは戦場
主である半兵衛様をお守りするのが護衛武将である私の使命




なのだが、半兵衛様は私に守られることが不服らしい


今だって、不満げな顔を私に向けている



「半兵衛様っ、お怪我はございませんか!」



「ちょっと来て、こっち」



「え?」


「みんなー。女主と俺で陣営考えるからその辺に来た敵さんたちぶっ倒しといて」



質問を無視し、兵に指示をだし私を森の中へ連れていく


日があまり当たらない木陰で半兵衛様は私を横たわっている木に座らせた


「半兵衛様?」


「こら」


半兵衛様は私の唇に手をあて、塞いだ


「戦場でも二人きりの時は名前呼びだって約束、忘れちゃった?」


「で、でも誰が聞いているかわかりませんし……」


「…ていうかさぁ」



頭を掻きながら寂しそうに彼は笑う


「俺はいいんだよ?戦場でも名前呼びで」


「それでは意味がなくなってしまいます」

一武将である私と恋仲であることを敵に知られたら困るのは半兵衛様だ


部下の兵たちからの信用をなくしてしまったら、士気にも関わるし何より縁談がなくなってしまう


人を殺すことしかできない私よりも、おしとやかで教養を受けた女性の方が、半兵衛様も楽しいはずだ


「女主」


むにっと頬をつままれた


「ふぇっ」



「またつまんないこと考えてる。いい?俺はその辺の美人な姫様や頭がいい女よりも、空っぽな頭で一生懸命に考えるかわいい女主が好きなんだよ。だから……」


何やら失礼なことを言われたような気もするが半兵衛様はそこで言葉をきると私の鎧を緩めた



背中には、微かではあるが敵に斬られた痕がある


「こんな怪我でも、してほしくない」


言いながら私の傷を手当てしてくださる
この方は本当に優しいのだ


「あ、足にも傷をつけてるー。まったく、俺の女主に怪我をつけるなんて許せないなぁ」


見ると、太股にも血が流れていた
それをまた優しく手当てしてくれる
腹黒だとか言われているけど、こんなにも優しい彼が私は好きなのだ。だから守りたい
例え誰にも言えない関係だろうと


「ありがとう、半兵衛……さま」


「もー、何でつけちゃうかなぁ」


「や、やっぱり慣れません!」


あなたを見るだけで高鳴る胸を抑えるのに精一杯な私には難しいです


半兵衛…さまは傷をまだ手当てしてくれている

「あの、まだ戦場ですし、また怪我をしてしまいます」


「だからやめろって?女主はわかんないかもしれないけどこれ毒矢だよ。化膿させたくない」


またもや話しながら手は止まらない

なんだか一生懸命な半兵衛様がかわいらしく見えてきた


「ふふ…」


「?どうしたの」


「あ、いえなんだか可愛らしいなと。」


ぴたりと、彼の手がとまった


「ふーん?…ねぇ、女主。俺ってさ、可愛いだけじゃなくて、優しいんだよ」


そういうと半兵衛様は妖しく笑い、私を背中から抱きしめ、首筋に顔を沈めた


「は、半兵衛様……」


「様はいらない、敬語もやめて」


「ひゃっ……」


突然手が動き私の太股を撫でる

同時に首をきつく吸われ、なんだか妙な気分になってきてしまった

「だって、他の小娘とかに言われたら絶対潰す」


「そ、そんな……」


物騒な発言をしているにも関わらず、手つきは優しい


肌の感触を確かめるように這う


「やっ…半兵衛、まだ戦場」


肌を這う手が鎧の中に入ってくるとさすがにまずい、と思った


まだ敵はうようよいる。例えこの戦が多勢に無勢、簡単なものだとしても、相手は逆転の瞬間を狙っている。


本気で止めようとしたその時


「半兵衛…何をしている」


「うわーこの空気で話しかけるなんてさすがは官兵衛殿だね」



「卿らが何をしようと勝手だが半兵衛よ、秀吉様が待っておられる。後にせよ」



「ちぇーわかったよ。やればいいんでしょやれば」


半兵衛は私に手を貸し立ち上げる


は、恥ずかしくて誰の顔も見れない……


そんな私に半兵衛は顔を近づけ耳貸して、と一言



「今日、いっぱい頑張るから夜にご褒美くれる?あぁ、もちろん君をね」


「あ、はい……」


思わず赤面して了承してしまったし、聞こえているだろう官兵衛様は知らぬ顔

半兵衛様は楽しそうににやにやと笑っている


「ふふ、君を見てたら飽きないよ、女主。」


そんなとこも好きだよ、と囁かれた



ああもう


半兵衛様には敵わない!




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