藍色の夜空を見上げながら、今日過ごした恋人とのやり取りに口元を緩ませて帰路についていた。空に反して私の気持ちは明るく、いつもは少し怖く感じる暗い道筋も足取り軽く進んでいく。幸せな気分は面に出やすい方で鼻歌まで飛び出してきた。


しかし、ふいに道を塞いでいる大勢の団体が目につく。その団体は個別にヴァイオリン、チェロと、思い思いの楽器を持っていて旅芸人の人達なのだとすぐに分かった。でもその中に1人見知った人物が―…

「月代さん…!?」
「あやや?ネピルじゃないか!」

そう、月代さん。
以前は私たちと同じように地底湖に住んでいた仲間。思わぬ人物に私が驚きの声を上げれば彼はふんわりとカールした髪を揺らして振り向く。月代さんもまさか私に会うとは思わなかったのか驚きに目を瞬かせ…しかしそれは一瞬の事ですぐに表情は明るくなっていく。


「……ひっさしぶりだなー!!」


「本当に久しぶり!」

「…なあなあネピル…恋人とかできた?」


そんな様子につられて自然と私も声を弾ませる。しかし次に彼から問いかけられた言葉には思わず目が点になってしまった。な、何で、どうして、急に恋人の話なんて。

「なん、なん?こ、いびと?」

「なーんだかさ、前と雰囲気が変わった気がする。」
「生き生きしているというか…ぽわぽわしてるというか…。」
「前よりも明るくなったから。……当たり?」


私がキョトンとした表情をして呆けたからだろうか―――彼は明るい笑みを浮かべて最後にこくり、と小首を傾げて再び問う。男性なのに何処か可愛らしいその動きは中性的な顔立ちをしている彼にはよく合っていた。可愛いなぁ、羨ましい。

………いや、今はそんな事は関係ない。―――…問題は何故彼に悟られたのかという事だ。前より明るくなった?そんなに表情に出てたのだろうか。確かに恋人のエイジ君と出会って会話していると胸がほわりほわりとして優しい感情が芽生えていった。その優しい感情は会話をする事に大きくなっていき話をするだけで胸が高鳴ったり、ズキリと痛んだり…今まで見てきた世界を色鮮やかに変えてくれた。エイジ君はいつも優しくて真剣で、でも少し不器用で…そんな彼が大好きだ。


思考を巡らしていく内に何だか余計に気恥ずかしくなり、じわりじわりと熱が上に上がってくるのを感じる。ソレを少しでも阻止すべく視線を泳がせて口ごもる。何か、何か…違う事を考えよう。

そうだ、今日の夕飯は何にしよう!
夕飯は…そういえば夕飯はエイジ君と一緒にパスタを食べたな…。
嗚呼…誤魔化そうにも自然にエイジ君の顔が浮かんでしまい隠しきれそうに、ない。

先ほどよりも熱は上がっていて…きっと私の顔は真っ赤なのだろう。その証拠に月代さんは全てを察してしまったのか、にんまりと笑っていた。

「おっめでとう!」

気がついたときにはバシバシと近所のおじさんのように背中を遠慮無く叩かれる私がいた。どうやら興奮させてしまったらしい。その力は意外に強く体を前につんのめらないように踏ん張る。痛いし恥ずかしい痛い、月代さん痛いです。

「ユークリッドとかさ、煩いだろー。」
「…う、うん、だから隠してる。」
「ネピルに恋人が出来たって聞いたら卒倒するぞきっと。」
「ふふ。」

痛さに表情をしかめたのが伝わったのだろうか―――"悪いー"っと苦笑混じりに笑うと私の背中を今度は軽くポンポン、と叩き唐突に同じ地底湖に住む同志の名を上げる。確かに、ユークリッドは最近よく外へ出掛ける私を訝しみギラリとした厳しい目を送ってくる。それは月代さんにも予想できた事なのか頷くと明るい笑い声をあげた。つられるように私も一つ笑う。

「……地底湖は何も変わってないよ。」
「うん、そうみたいだな!安心した。」
「月代さんも変わってないね。」
「照れるな!」

その懐かしむ言葉に彼はまったく地底湖に帰ってきてない事に気がついた。でも内心では、やはり私たちの事は気になるのだろう…先程の会話から何となく察して、そう伝えると彼は大体を把握していたようだ。――昔と変わらない笑みを浮かべている。それは夏の向日葵を彷彿させるような明るいもので――嗚呼、この人は本当にわらない。



(ところでネピルの恋人ってどんな人?)
…………それは内緒っ


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久しぶりなのに変わっていない月代に安心したネピルとエイジ君のおかげで明るくなったネピルを見て嬉しい月代。

月代さんは直感で生きてるので意外に鋭い。
ちなみにこの後はエイジ君について根掘り葉掘り聞かれてネピルさんはタジタジだと良い!

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