「終わったー…」
上司に提出するレポートを作成していた私は完成された数枚のプリントを手に、ようやく終わった仕事に思わず安堵の息を吐く。これに書かれている内容は私が管轄している海の状態に妙な渦潮が起こっていないか、波の高さは規定範囲内であるか等を詳細に記載した物であり、上司はそのレポートを元に会議で話し合い治安を守っている。私もその一部に貢献できていると思うと凄く誇らしい。大好きな仕事だ。


最後にホッチキスでパチリと止め完成品となったソレに満足するものの、ふと窓を見ればレポート作りに手間取ってしまったのもあり外は真っ暗だった。ああ…時間が経つのは早い…そう思いながら今日は帰ろうと鞄に筆記用具やノートパソコン等をしまい身支度を整えていれば、ふいに背中越しに声が響く。

「うーみっぎりー」

こんな時間にまだ人がいたのか。内心、少しの驚きを胸に秘めながら振り向けば、声の主は調査隊の中でも自分勝手な行動が目立つと噂のメデューだった。彼は仕事をテキパキと片付ける方で夜に本部までいるのは珍しい…大方サボリすぎた罰として始末書でも書かされていたのだろうか―そんな事をグルグル考えているとメデューはニコニコと機嫌良く手にした書類を此方に持ってくる。嫌な予感…。

「ね、これやっておいてよー」

予感は的中…!ひらひらと差し出した書類には"始末書"と大きく表記されている。更には…こともあろうに彼は始末書作りを私にやれと言う。

「じ、自分でやらないとっ……!」

僅か動揺してしまった私はどもりながらも正統な事を主張する。しかし彼はそんな私が面白いのかニマニマと人の悪い笑みを浮かべ、彼特有の間延びした口調で答える。

「あはー、僕もう始末書作りに飽きちゃってさー。海霧にやってもらった方が良いと思うー。」
「い、いや…!私がやったら始末書の意味が無くなっちゃいますっ…」
「良いの良いの、細かい事は良いんだよ。」

無茶苦茶な主張に慌てて反論するものの、まったく私の意見が通じない…相変わらずケラケラと軽口を叩く彼の言葉にちょっとした目眩を感じた。ああ…噂以上に自分勝手というか…。何故、彼は調査隊に入れたのだろう…。

「もう!ダメです!」
「えへー。」
「可愛い子ぶっても許しませんよっ。ちゃんと始末書書いてください!」
「…僕さ、始末書とか反省文を書かせる意味が分からない。強制するもんじゃないよねー」
「こらー!」

からかうような言葉が、口調が、勘に触って思わず語尾を強めて注意してもウィンクをして誤魔化してきたり肩を竦めたりでまったく効果が感じられない。いつもそうだ。ヘラヘラしていて掴んだと思ったらいつの間にか離れているような彼には調子を狂わせられるばかり。私の言葉で彼の心を刺そうと思ってもヒラヒラと蝶のようにかわされるだけで……ああ、もう!

(誰かメデュー対策方法を教えて…!)

――
自己中すぎる人柄に困惑気味な海霧と全力で反応する海霧が面白いメデュー。仲は良い方だけどいつもメデューに振り回され、そんな海霧をやしろが見かねてメデューを怒るのが日常。

ちなみに始末書はブーブー言いながらもやりだしたら早いので、すぐに終わって海霧を余計に疲れさせたよ!


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