諦める



「おい捺希…なんでここに居るんだァ?」

過激派攘夷志士、高杉率いる鬼兵隊。
そのアジトは大きな宙を飛ぶ船。
だがたまに物資を仕入れるために港に着く事もある。

まさに今、港に停泊中だ。

その時を狙って捺希はもぐりこんだ。

案外すんなり潜り込むことが出来るなぁと苦笑いの捺希。


「いや、普段外に出ない晋助を引っ張り出そうと思ってな」


「いや、俺ァテロリストだからほいほい外に出れるわけねェだろ」


スパコンと捺希の頭を叩く。

気にした様子もなくいいだろとせがむ。


「大丈夫だ、問題ない」

「あるだろ普通に」

「何故?」


呆れたように溜息をつく高杉。


「あのなァ…俺はテロリストなんだよ」

「?そうだな」

「もし俺と一緒に居る所見られたらてめーだって…」

「お?心配してくれてんのか?晋助」

にやにやと高杉の肩を叩いた。
え?え?とにやけ顔で高杉の顔を覗く。


「あたりめーだろうが…やっと還ってきたんだ…もう二度と幕府なんかにゃ渡してたまるかよ」

「晋助…」

眉間に皺を寄せて捺希の腕を掴む。
昔の、捺希が幕府に処刑された所でも思い出しているのか一瞬瞳が揺らいだ。

そんな高杉を見て捺希は笑顔を浮かべた。


「相変わらず晋助は優しいな…」

「あ?」

「大丈夫だって、見つかっても逃げればいい」


な?と得意げに言うものだから高杉も諦めたように溜息をついた。
そういえば唯我独走するやつだった、と。


「仕方ねぇな…」

「お、じゃあ早速行こうか!」


いそいそと高杉の手を引いて部屋を出た。
途中ですれ違う人に驚かれたり二度見されたり。


「おや、晋助…とかぐやでござるか?」

「あ、万斉!」

「どこかへいくのか?」

「ああ、ちょっと晋助借りるわ」

「わかった、気をつけるでござるよ?」

おう、と返事をして高杉の手を引っ張って船を後にする。



にこやかに送り出す万斉と自分の手を引っ張る捺希にもう何も言えなくなった高杉。


満更でもなさそうに笑って仕方ない、と。

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