追いかける



「いいんですかアレ」

男達の桃源郷、吉原。
新八が指差すのは遊女たちに囲まれてだらしなく破顔した銀時の姿。
隣の神楽は冷めきった目で見ている。


「うーん、まぁいいんじゃないか?」

「いや、浮気ですよね」


新八はやれやれと呆れたように銀時を見た。
捺希は至って気にした様子もなくお茶を啜る。


「でも普通はああいうの嫌がるんじゃないですか?」

「そうヨ、捺希姉は嫌じゃないアルか?」


「まああれはただの遊びだしな」


そう笑う捺希に納得のいかない子供二人。
ただ、と続けた。


「もしも銀時が…」

「え?」

「私じゃなくて他に心から愛する人を見つけたのなら私は消えるよ」


湯呑みを置いて遠目に銀時を見つめた。
目を細めて少し悲しそうに笑う。


「捺希、さん」

「流石に昼ドラみたいなのは勘弁だしな」


「捺希姉は…それでいいアルか?」


悲しそうに捺希を見上げる神楽の頭を撫でる。

「いいんだよ」

「でも」

「銀時が幸せならそれでいい…」


「それじゃあ捺希姉だけが救われないヨ」

「そんなことないさ」


「捺希さん…」

「捺希姉…」


二人に笑ってもう一度銀時の居る方へ視線を向けた。
神楽と新八はそんな捺希の横顔を見つめる。

暫く銀時を見ていれば遊女の一人が銀時に文を渡した。

可愛らしく頬を赤く染めて2、3言交わして銀時が止める間もなく走り去って行った。
取り残された銀時はどうしたものかと頭を掻く。

しかし好意を寄せられて悪い気はしないもの。

まんざらでもなさそうな銀時。


流石に捺希もこれはアウトかと思い新八は恐る恐る捺希の方を見た。


「あの、捺希さん…?」


「ん?」


「(あ、なんか普通)」


「やっぱり銀時はモテる、なぁ」

ぼそりと呟いて立ちあがった。

「え?」

携帯を取り出して時間を確認する。
そのまま携帯を懐へ仕舞いこんだ。


「そろそろ時間だから帰るよ」

「え」
「え」

背を向けて歩き出す。

「じゃ銀時に言っといてな」


ひらひらと手を振った。

二人に顔だけ振り向かせてじゃあ、と笑う。


「あっ捺希さん!!」


そのまま歩いて行ってしまった。


その直ぐ後に銀時も戻ってくる。
硬直した子供二人に怪訝な表情を浮かべた。

「どうしたんだおめーら」

「銀さん」

「あれ、捺希は?」


問答無用で神楽に吹き飛ばされる。

「ちょ、何すんだこのやろおおおお!!」


「早く追い掛けるネ」

「は?」

「いいから捺希姉を追いかけるネ!」

「ちょっとまって、意味が…」


新八が銀時に言う。


「銀さん、アンタがラブレター貰ったのを見て帰ったんですよ」

「は?!」

「なので早く追い掛けてください、じゃないと捺希さんいなくなっちゃいますよ」

「そうヨ、銀ちゃんが浮気したら捺希姉二度と会わない言ってネ」

「!」


そんな言葉に間髪いれずに走りだした。



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