焦がれる



「捺希は好きな人、居ないの」

友人に聞かれた。
好きな人。好きな人か…。
どうだろう。

「好きな人、ねぇ」

「うん!!捺希からそういうの聞かないからさ」

全く…。女の子はこういった類の話し好きだよなぁ…。
しかもものすごく期待してるしな。
どうしたものか。

「あ、松陽先生は?!いい感じじゃない!」

「いや、あいつとはそんなんじゃないし…」

そもそも生徒と教師だからな。
そういうあれはダメだろう…。

「えー」

なんでそんなに残念そうなんだよ。
というか私と松陽ってそんなに好い仲に見えるのか?
ただの幼馴染なのに…。

「えーって…第一松陽とはただの幼馴染だからな?」

「幼馴染!それってさ!いつの間にか恋心がーとかじゃなくて?!」


私と松陽が?

いつの間にか?

恋心が?

芽生える?


…ハッ!!
だめだ!!一瞬脳内で松陽と付き合ったがだめだ!!!
なんか…だめだ!!!!
たしかに昔は夫婦みたいだとかいわれたけど!!


「いや、ないないないないないないない」

「えぇー!じゃあ他にいないの?」


他?他ねぇ…。

辰五郎?
いや、あいつはダメだ。
綾乃っていう嫁が居たしそもそも死んでる。

あと…。

次郎長?
あーないな。あいつはただの悪友だし戦友だ。
それにあいつも嫁が居る。

西郷?
ああ、ないわ。あいつはないな。確実に。
だってあいつオカマだったもん。
それに…あいつも嫁が…。
って。
何このリア充率?!?!
ふっざけんなよ?!?!
いや別にいいけどさ!!
羨ましくないし?!第一今私の方が若いし!!

しかもあいつらの誰かとそういう関係になったら昼ドラになるし!


つーかそもそもの問題。

住んでる世界が違うし!
別に身分とかの問題じゃなくて普通にワールド的な意味でな。


「どうしたの捺希…?百面相なんかして」

「いや、なんでもない…」


あーでもそうだなぁ。

テレビだけでしか見れないけどあの子。


もう会えないけど。
会って話す事も触れることも出来ない。

こちらへ来て漫画の世界ということになってた。
あの子がいる世界。私と松陽が居た世界。

いきなり大きくなっていたあの子。
最初は戸惑った。
でも見てるうちに段々目が離せなくて。
だけど多くのファンの中の一人でしかもここでは二次元の中の物語とされている。

でも確かに私の中にはあの子と過ごした記憶がある。


なんだろうな…。


「捺希?」

「ああ、いやな、気になるやつは居ないでもなかったな、と」

「ええ!!本当?!」


「ああ、でももう会えないんだけどね」

「えっ」

「死んだわけじゃないんだ、でも会えない」

「そう、なんだ」


そう、あの子は死んじゃいない。
死んだのは私の方。


成長したあの子を見て少しだけ心が騒いだ。

気になる、っていえば気になるからな。嘘じゃない。


「でも捺希は本当に好きなんだね、その人の事」

「え?」

「だって今捺希の顔とっても綺麗」

「は?」

何をいってるんだ、こいつは…。

全く…。


ああ、夕陽が綺麗だな…。

あの子と一緒に居た時もこんなに綺麗な夕陽を見たんだっけな…。

ああ、くそ。


無性に会いたくなってしまったな。



あの子の事を思うと酷く、心が痛い。


会えない、なんて。


あの子が恋しい。




君に…。

prev | next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -