第一印象を良くしとけば大体何とかなる
「はぁ?旅行?」

警察署の中に真選組専用の部屋がありそこは屯所と呼ばれている。
屯所と呼ばれる、呼んでいる理由に深い意味はない。
ただ松平が屯所と呼ぶからそれが伝染していっただけだ。
深い意味はない。大事なことなので二回言いました。
ただ屯所内は他の部屋とそう変わらずな内装になっている。


松平が屯所に来て言い放った。
なんて無茶ぶり。

「おう、ちょっくら旅行へ行って来い」

「いや、とっつぁん意味わかんねぇよ」

「流石とっつぁん、たまには良いこといいやすねぇ」

行きやしょうよ、と近藤にせがむ沖田。
それを渋る。

「でもなぁ…」

「いいじゃないですかィ」

「うーん」

そんなやり取りを見かねた松平がキレた。

「いーから行くのか?行かねぇのか3秒以内に決めろ」

殺気を出しながら拳銃を近藤に向けて構える。
まるで極悪人面。

「はい、いーち」ズガンッ

そして撃った。
ぎりぎりの所で避ける。

「2と3はああああああああ?!」

地面にめり込む複数の弾丸からは硝煙が上がっている。
沖田と捺希は巻きこまれない位置に移動して遠巻きに傍観を決め込んでいた。


「うるせぇ!男は1だけ覚えときゃいいんだよ!」


そして近藤の額に銃口を充てる。
はたから見たら強盗犯や凶悪犯にしか見えない絵面。
本当だったら大問題だがこの部屋には生憎昔ながらの面々しかいないのでまたかと自分に飛び火しないように眺めている。

「で、どうすんだ逝くのか?行かねぇのか?はっきりしろよ」

「いや、急に言われても…」

「はっきりしねーゴリラだな」

「撃っちゃおーかな、オジさん撃っちゃおーかな」なんて言い始めた所で土方が助け船をだした。

「おい、とっつぁん…俺らがここを空けたらいざってー時に困るだろーが」

いざって時、それは前世に居た元攘夷志士が現代では普通の警察で手に負えないその犯罪者が出た時のこと。
自分たち真選組出なければ手に負えない、対処ができないから離れることは出来ないと土方は言う。


「わかりやした、じゃあ土方さんだけ残って下せェ」

「なんでだよ?!」


今まさに抜刀しそうな、いや抜刀した土方とバヅーカを構えた沖田。
いつもの命がけのじゃれ合いが始まる。
横で捺希はため息をついた。
仕方ないな、というように。


「で、松平…行き成りなんで旅行なんて行けっていうんだよ?」

「おう、捺希…オジさんはなぁ日ごろのお前らを労わってゆっくり休んでもらいてぇのよ」


「まるで労わってるような絵面じゃないよねぇ?!」

「うるせぇぞゴリラ」

「とっつぁんんんんんんんん!!俺ゴリラじゃないからね?!」


「で、本当にそれだけなのか?」

「おう」

横で無視?!と騒ぐ近ど…ゴリラ。
捺希はまさか松平が労わる、という心があるなんて…と失礼極まりないことを思っている。
だがまあ松平の普段を見ていればそう思わざるを得ない。
裏があるのではないか、なんて頭の端で思う。
それは土方も然り。

「でも大串くんの言う通り流石に全員抜けるのはまずいぞ」

後ろで土方が大串に反応して叫ぶ。

「誰が大串だ!!」

沖田とじゃれ合いをしているというのに器用なことをする、と感心する捺希。

松平は近藤の額から銃口を離し拳銃を懐へ仕舞った。
そして捺希の方に視線を向ける。

「いーんだよ、オジさんが何とかするから」



そう言って全員洩れなく旅行へと行かされた。
松平にもう何言っても聞き入れてはくれない、そう思ったためもう諦めたのだ。

旅行は旅行でもまあただの旅行ではなかったのだけれど…。


そう、もうお約束のあの人の護衛という名の旅行だった。

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