割と平和なのかもしれない世界 真っ黒な隊服に身を包んで罪人を切る。
この国で唯一刀を持つことが許された組織。
特殊武装警察『真選組』。
はたから見ればガラの悪いただのチンピラ集団。
だが彼らの心には真っ直ぐな一本の芯が確かにあった。
それは強く美しく、たった一つの信念の元に剣を振るう姿はまさに侍。

彼らのほかにもそんな魂を持った武士がいる。
かつて真選組と対立をしていたり腐れ縁の中だったりはたまた国に喧嘩を売った奴らもいた。

真選組に昔の話だが国に喧嘩を売った者がいる。
とても強く荒々しいがどこか美しいその女。
この世界でもその強さは健在でかつては対立していた国に仕えている。
その女の名は、

「捺希」





仲間に呼ばれ振り向いた。
右手には愛刀を持ち付いた血を払い鞘に納める。
顔にはうっすらと赤が。

「どしたの大串君?」

「誰が大串だああああ!!!!」

大串と呼ばれた男は怒り今にも切りかかってきそうな雰囲気。
大串の後ろで刀を構える同じ隊服の茶髪の少年が見えた。

「あ」

「死ねええええええええええええ!!土方ああああああああああああああああ!!」

「どぅわあああああああああああああ!!!」

すれすれの所でよける大串、基土方。
捺希はいつものことなので呑気に眺める。

「総ォ悟ォオォオオォオオオオオ!!!!!」

切りかかった少年、沖田総悟は舌打ちをした。
もう隠す気もなく大きな音をだして。

「ッチ!何姐さんと話してんだ死ねよ土方コノヤロー」

「てんめえええええ!!!上等だ!!刀を抜けぇえええええ!!!」

ついに抜刀した土方に何処から出したのかバズーカを構える沖田。
ひとしきり暴れた後土方が捺希の頬を指差した。

「おい、汚れてるぞ」

「まじでか」

隊服の袖でごっしごし擦る。

「おい、んなに力こめると赤くなんぞ」

「…おう」


連れて行かれる犯罪者達を横目に見る。

「しっかしまぁこいつらも変わんねぇな」

「あ?」

「ほら」

連行されている途中にも関わらず騒ぐ犯罪者達。
それを指差して笑う捺希に呆れ顔の土方。
沖田は面白そうに笑っている。


「かぐやあああああ!!」

「俺だああああああああああ!!」

「切ってくれえええええええええ!!!!」


「な?」

「なんでだよ!!」


過激なドM発言に突っ込みを入れる土方と面白そうに笑う捺希。
沖田はへぇ、と笑う。

「こいつぁいい豚じゃねぇですかい」

よく調教されてやがるぜ、と感心したように捺希をみる。
「初対面なんだけどな…」困ったように笑う。

「まぁまぁ、姐さんの名前がそれほどまでにドSってことなんでさぁ」

「いや、名前がドSってどういうこと?」

「そういう意味でさぁ」


沖田と捺希がじゃれているといつの間にやらパトカーの隣に立つ土方に呼ばれる。

「おい、てめぇらいつまでも遊んでんじゃねぇ!おら、行くぞ!!」

「おー」

「ッチ」


二人もパトカーに向かう。
三人はそれぞれパトカーに乗り込んだ。
運転席に土方、助手席に沖田、後ろの犯人の隣に捺希。


「かぐやさん!」

捺希が隣に座れば嬉しそうに目を輝かせる犯罪者。

「おー」

「かぐやさん!相変わらずお強いですね!!」

「かぐやさん!何で真選組なんかにいるんですか?!」

「かぐやさん!!」

「かぐやさん!!」


「うるせええええええええええ!!!」

かぐや、かぐや、と騒ぐ犯罪者たちに遂に土方がキレた。
横で沖田が「アンタが一番うるさいでさぁ死ねよ土方」と言う。

尚も騒ぐ犯罪者たち。

「にしても相変わらず人気ですねぃ、あのお人は」

「ああ、そうだな」





「おめーら元気だねぇ」

「いやいや、だってかぐやさんですよ?目の前にかぐやさんがいるなんてまさに夢の様で…」

「そうっすよ!俺らからしたら神様みたいなもんですし!」

「そうそう!」

「過大評価しすぎじゃね?」

「いや、そんなことないっす!」

「俺らの希望でした!」

「希望って…」

「あの地獄のような戦場でかぐやさんの存在は大きい…我々はあの戦場で何度も救われました」

「…そうか」

困ったようにそう返す。


「あの、かぐやさんは何故真選組なんかに…」

「何故って言われてもなぁ…」

「貴女は幕府に殺されたんですよ?!なのに…」

「だけどもう幕府なんてないんだぞ?それに自業自得だったしな…」

「そうかもしれませんけど!」

「いいんだ、守りたいものもあるしな」

「かぐやさん…」

「それに…お前らみたいな後輩のケツを拭くのも先輩(わたし)の仕事だ」

「でも貴女が真選組にいるということを良く思わない輩もいます…気を付けてください」

「おう、ありがとうね」

「えっそんな礼なんて」

「ん、心配してくれてんだろ?」

「いや、だって」

「だからありがとう、それに私は割と強いからなちょっとやそっとじゃ負けねぇよ」

「そう、ですね」

「それにあの白夜叉たちがいますしね」

「たしかに!」



前に座る二人は何も言わずだった。
そのまま車は警察署へと向かう。

昔は確かに元攘夷志士である銀時を捕まえようとしていたが今ではその必要もなくなった。
幕府はもうない。
しょっ引く理由何てもうないのだ。
そして捺希をしょっ引く理由も。
それに一度は裁かれている、もうこれ以上裁く必要も理由も無く松平にかぐや姫の強さが勿体ないと真選組に誘われたのだ。

高杉や桂も今ではテロなんてやっておらずただの学生として生活をしている。
なのでその二人も放置されている。

ただ銀時や神楽、新八はよく面倒事に巻き込まれたりするので警察の厄介になることもしばしば。
そこにさらに巻きこまれたり巻きこんだりするのがかつての戦友の桂、高杉、辰馬だったりする。



割と今は平和なのかもしれない、なんて捺希は最近思っている。
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