第一印象を良くしとけば大体何とかなる

旅行とは名前ばかりでお守(護衛)旅行だった。
一瞬たりとも気を抜けない。
相変わらずのお忍び旅行で今回は桜が見たい、ということで都会から離れた緑溢れる某所に来ている。
この時期桜が満開になる。

「きれい、だな」

小さく捺希が呟いた。

「ったく…まーた将軍…じゃねぇか茂々様の思いつき旅行かよ」

「あはは…前はスキーだったな」

「ああ…ったくあんときゃ酷い目にあったぜ」

「確かにな…」

スキー旅行の時を思い出して苦笑いの捺希と苦虫をつぶしたような表情の土方。
遭難してチュパカブラスは出るわ、ビックフットはいるわで…。

「まあでも今日は銀時たちは学校だしここに来ないはずだからあの時みたいにはならないと思うけどな」

「ああ、だが油断はできねぇ」

「まあ、ねぇ」



遠目で花見を楽しむ茂々とそよ。
今回は兄妹で楽しんでいるようでなんとも微笑ましい。


「あっ!捺希さんもご一緒にどうですかー?!」

「…じゃちょっとお邪魔しようかな」

「オイイイイイイイイイ!!」

そそくさとそよの隣に座る捺希。
そして酒盛りをし始める。

「つか捺希!てめぇはまだ未成年だろうが!!」

「あ?いーんだよ、一回は成人してんだからよ」

「そういう問題じゃねぇええええええ!!!この世界では未成年だろうが!!」

「ケチケチしねーで酒くらいいいじゃねぇですかぃ死ね土方」


ちゃっかり沖田もその席に混ざり鬼嫁の酒瓶を持つ。

「おめーもいつの間に参加してんだあああああ!!」


「だーいじょうぶだって」

結局土方が騒ぎ始めたところで真選組全員で宴会に参加。
近藤は安定の全裸。
山崎は見知らぬ誰かと何故かカバディをしていたり中々にカオス。


「そういえば捺希さんって今高校生なんですよね?」

「ん?そうだよ」

「へぇ!じゃあ銀ちゃんや神楽ちゃんやぱっつぁんさんと同じ学校なんですか?」

「いや、違う学校だよ」

「ええええええ!何でですか?!」

「なんで、と言われてもなぁ…まあ江古田のが楽だから?」


酒を煽りながら答える。
土方に酒を飲ませて酔っ払わせてからゆっくり自分はのでいたり。
ちなみに捺希は酒に強いので中々に酔っ払うことない。

「えー」

納得いかないと言わんばかりに頬を膨らませるそよ。
困ったように笑った。


ふと捺希のお猪口に桜の花びらが落ちた。

それを一気に飲み干して満開の桜が映る空を仰ぎ見た。

「うん、悪くないねぇ」





日も沈みかけてあたりはきれいな赤に染まる。
赤い夕陽に桜も中々に映えてきれいだ、なんて思いながら酔いつぶれた連中を起こす。

「捺希」

「ん?なんですか茂々殿」

「わざわざすまなかったな」

「ああ、別に私らも楽しかったし気にしないでください」


酔いつぶれた土方を肩に手をまわして支える。
はっきりいってあの頃では考えられない光景。
それもこれも時代のせい。
将軍の命は狙われても今では天皇の命を狙うものはいない。
元よりお祭り好き、日々が騒がしく頭の中がお祭りな彼らだ。
なおさらだろう。
それにここにはかぐやがいる、それだけでも大分心強いのだろう。
ちなみに真選組の隊士たちは土方の言うことは中々聞かないが捺希の言うことは二つ返事で聞く。
隊士たちからは姉のように母の様に慕われている。


「さて、そろそろ引き上げましょうかね」

「そうだな…」

服を着せられた近藤と隊士たちが先に茂々とそよと共に宿へと向かう。
土方だけが酔いつぶれていた。

酒に弱いにもほどがある。


「じゃあ俺ら先に行ってますけど副長に襲われないように気を付けてください!」

「大串君、トッシーだしへたれだからそんな甲斐性は無いから大丈夫だ」

「そうですけどでもいざって時はすててきてくださいねー」

そんな酷いことを言われているようだが何だかんだ土方のことは嫌いにはなれない隊士たち。

全員が先に行った後土方が自力で歩けるようになって宿に着いたのはすっかり夜になってからだった。



とりあえず土方を部屋に置いて捺希も用意された自分の部屋に行き早めに就寝した。
 
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