あれから数年はあっという間に過ぎた。時間が過ぎるのがあっという間に感じられる。 私は、世間で言ういい大人の年齢になり美々子ちゃんと菜々子ちゃんも大きくなって二人はまだ子供と言われる年齢だけど、私達が住んでた部屋からは出て行った。二人で住むそうだ。 私はまだ早いと言ったけど傑は「二人が決めた事だから尊重してあげなよ。」と言って二人が部屋から出て行く事が決まった。そして私と傑も新しい部屋へと引っ越す事になった。 美々子ちゃんと菜々子ちゃん二人の部屋は傑が用意したようで、そこそこ楽しく暮らしているらしい。離れるのが寂しく感じて居たけれど、二人共気紛れに定期的に私が居る部屋に遊びに来てくれる。今日も二人が遊びに来て、「一緒に服買いに行こうよ。」なんて言うから、急いで支度をしていた。 「ねー、名前まだー遅いんですけどー。」 「早くー。」 『お待たせ。だって二人共いきなり言い出すんだもん。そりゃ準備に時間もかかるよ。』 「もう出来たんでしょ?行こ行こー!」 「ん。行こう。」 「はー?美々子何で名前にしがみついてんの?」 「いいじゃん。私のだもん。」 「じゃあ私もくっつく。」 『歩きづらいなあ。もう。』 玄関を出たら二人が片側に双方くっつくようにしたものだからなんだかんだ言ってこういう所は変わってないな、なんて微笑ましく思う。 電車で二人が行きたがっているお店のある駅まで向かって、年相応に騒がしくしている二人と騒がしく買い物をした。こんな事を繰り返していてもなんだかんだ、私は高専関係者に見つかっていない。恐らく規定に基づいて処刑対象になっているだろう筈なのに、こうして過ごしているとただの一般人だ。 二人と一緒に自分の分も勧められるままに服を買って一緒にクレープを食べる。 ふと傍目から私達はどう見えているのか気になって何となく私はその言葉を口走った。 『ねえ、美々子ちゃん。菜々子ちゃん。私二人のお母さんみたいだね。』 「親とかはわっかんないな。けど、名前は私の家族だよ。」 「うんそうだね。家族。だから大好き。」 『ありがと、私も大好きだよ。』 二人と買い物を終えて帰ったら、部屋の中にはまだ傑は帰って来てなくてリビングにあるソファに横になっているうちにいつの間にか眠っていたようだ。 物音に気付いて目を覚ましたら、もう帰宅して着替え終わった傑が目に入る。 私の身体にはブランケットがかけられていた。 「起こしちゃったかな。」 『ううん、大丈夫。それよりいつの間にか寝ちゃってた。今日美々子ちゃんと菜々子ちゃんと買い物行っててね。それで帰ったら寝ちゃってたみたい。』 「あはは、仲良いね。何か飲む?」 『お水飲みたい。』 そう言うと、傑が台所から水を入れて私の所に運んでくれた。それを受け取って私の隣に座った傑の肩に頭を乗せる。 『ねえ、傑。私達いつの間にか大人になっちゃったね。』 「そうだね。名前は歳とってる感じあんまりしないけど。」 『それ、私子供っぽいって事?』 「子供っぽいっていうよりは若いって感じかな。私が時を止めちゃったからかな。」 『あはは。そんな事言ってると傑魔法使いみたいじゃない?』 「魔法使いね。なれたらいいんだけどねそんなもの。なれないから私は自分の描いたものの為にこんなに時間をかけてる。かかってしまった、の方が正しいかな。」 時折傑はこんな事を言ってどこか悲しそうな顔をする。 誰かを思い浮かべているのはよく分かって居る。その誰かに私はなれないし傑もなれない。その誰かとは高専に居る時に私達二人が良く知る人間だった。 『ねえ、傑は傑だよ。』 「君だけだよ、今の私にそんな事を言うのは。」 大丈夫だよ、傑。私は、もう善悪なんて何も考えてやしない。ずっと何度でも言うよ。 傑は傑だって。 ただ手の届く範囲に居る私が大切だと思ってる人を守りたい。それだけなのだ。 誰に責められようが、私が選んだ答えなのだ。 next |