*お相手野薔薇ちゃんですが百合ではありません



野薔薇ちゃんと久しぶりに休みが合ったから買い物をしている。
野薔薇ちゃんはセンスがいい。「これもアンタ似合うわよ。」なんて言って私の服もサクサクと選んで行く。私はそうかなあ?なんて思いながら鏡で合わせてみると案外合っているかもしれないと思って私は野薔薇ちゃんチョイスの服をカゴに入れる。
野薔薇ちゃんとこうして買い物に行ったりカフェに行ったりするのはとても好きだ。
高専で唯一の同級生の女の子で、最初は結構さばさばしている野薔薇ちゃんと合うのかなあなんて思って居たけれど野薔薇ちゃんは私が杞憂に思っている心配をよそに私と凄く仲良くしてくれた。一回真希先輩に「お前ら出来てんじゃねーの?」なんてからかわれたけど決してそういうのではない。
恋愛感情では無い。だけど、友情の中でもかなり上位の感情に入るだろう。
多分私が男の人だったら野薔薇ちゃんを好きになって居ただろうから。


ひとしきり買い物を終えてお互い買い物袋をパンパンに抱えて、カフェに入った。
こういう時にお金を使わないと正直忙しくてお金を使う暇なんて無い。
別に全部貯めてもいいんだけど「そんなの味気ないしつまんないわよ。」と野薔薇ちゃんは言う。確かにそうである。いつ死んでしまうか分からない世界に居る以上学生と言えど悔いは残したく無かった。
野薔薇ちゃんとカフェに来るとお互いお揃いのドリンクを注文する。

「はー…今日も買ったわね。」

『うん、すっごい買っちゃったね。でもスッキリしたあ。』

「分かる、思いっきり買い物するとスッキリすんのよねー。っていうかこういう楽しみが無いと東京に居る意味ないじゃない。」

『まあ、そうなのかな?』

「名前は東京出身だから分かんないだろうけどそうなのよ。買い物、グルメ、楽しまないと損よ。こんだけ溢れてるんだから。」

『なるほどね。まあ、そうかもね。』

はあ、と買い物疲れのため息を吐きながらカフェの椅子に二人してだらけていた。
甘いドリンクが染みわたる。一回伏黒君と虎杖君とも来た事はあるけど二人共このドリンクは甘そうだからいらないと言われたんだった。
虎杖君は荷物をよく持ってくれるけど、それはそれで悪いのでこうして二人で買い物をしてる方が気兼ねしなくていい。

「そう言えば、名前最近元気ないわね。」

『そ、そう?』

急に野薔薇ちゃんがそんな事を言うから声が上ずった。
別に誰かに話すつもりも気にかけさせるつもりも無かった。ただ、高専に入る前から付き合ってた彼と別れたのだ。別にそんな深い付き合いだった訳じゃない。
しかも離れてしまえば、スマホでお互いのSNSを見る事くらいしか近況を知る術は無い位連絡もしなくなっていたし、だから向こうのSNSによくコメントをしてる女の子が居る事を知ってても深追いもしなかった。
面倒臭かったのだ。向かい合うとか、そういうのも面倒臭かった。
それが続いて結局私から一言メッセージで別れようと言ったのが3日前。

『よく見てるんだね。野薔薇ちゃん。っていうかよく気付いたね。』

「私が名前の事で気付かない事がある訳ないでしょ。何?言いたくないならいいけど。」

『…うーん、中学の頃から付き合ってた彼氏と別れた。
けど落ち込んでるというよりは若干スッキリはしてるんだよ。ほぼ連絡も取らなくなってたし。』

「高専入ってから連絡も取って来なかったの?」

『そう。だから割と平気。』

本当に平気なのだ。言うとするならば、文句をしっかり言ってから別れてやれば良かったのだろうか。魚の骨が喉の奥に刺さってるかのような絶妙な不快な思い出としては残ってる。それを上手く野薔薇ちゃんに説明出来ずに居ると野薔薇ちゃんは脚を組みなおす。

「名前の事放っておくなんて馬鹿な男ね。そんなの居ない方がいいじゃない。
正解じゃない、別れて。」

『そう?かな。』

「そうでしょ。名前はこんないい女なのに勿体無い。
そんな男の為に落ち込む必要無いわよ。」

『あはは、野薔薇ちゃん優しいね。』

「本音だから。私お世辞言うの好きじゃないの。」

『野薔薇ちゃんっぽいね。』

「でしょ?だから、まあ…名前には私が居るから大丈夫よ。男じゃないけど。」

『いや、その辺の男より恰好いいから嬉しいよ。』

「…そこは恰好いいじゃなくて美人って言いなさいよ。」

そう言って野薔薇ちゃんは不貞腐れるような顔をしたから『美人だよ。』と言って笑ったら野薔薇ちゃんも一緒になって笑う。
私にとって今一番心地良い場所は野薔薇ちゃんの隣かもしれないなあ。
というか、野薔薇ちゃんが恰好いいから彼氏出来なかったらどうしよう。
なんて心配になる程には頼りになる。

『私、野薔薇ちゃんと一緒に居るのが楽しいや。』

「私も。どうせならイイ男とそうなりたいものね。」

『そうだねえ、まあそれは先でいいや。』

「確かに言えてる。」

私は、心の中に引っかかってた妙な感覚がすっきりと抜けてしまって変にスッキリした気持ちで高専に二人で帰った。
野薔薇ちゃんは私の世界一恰好良いヒロインだ。




end お友達の推しの野薔薇ちゃん私的プレゼント小説です



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