*微裏表現がありますので苦手な方はご注意下さい。







「ねえ、何で。」

名前は俺のとこに来んの?そう喉元まで出かかった言葉を俺は飲み込んだ。
言ってしまったらはい、おしまーい。って簡単になってしまいそうで何も言えない俺は黙って名前の頬に手を伸ばしてキスをした。
何でそんな風に簡単にオシマイ!ってなるのかってーと、俺と名前が普通に付き合ってる所謂彼氏彼女って関係じゃないからだ。
だからこそ、簡単に向こうからもうオシマイね。なんて言われたらそれで終わりだしその先は無い。
自分でもすっげえ馬鹿な事してんなーってのは重々承知。
寧ろ知り過ぎる位だ。

俺の部屋の中に名前の香りが溶け込んで行く。
その香りに頭がクラクラしてくるんだ。いつも。
だけど俺は名前がこの部屋からアイツのとこに帰って行った後に残った香りは大嫌いで。
おかしくなりそうになる。
だけどその癖、この香りが好きで仕方ない俺は自分の事がもう分からなくなって来ていた。

名前の唇に噛み付いて何度も吸い付くように求める。
名前の開かれた唇の隙間から、溢れる少し高い声が俺はすっげえ好きだ。
これが聞きたくて、何度も何度も舌を絡める。
大体さ、変なんだよねー。キスだけでこんなに気持ちEーなんて。
そんなの今まで一度だって無かったし、大体えっちする前に一応しとくか程度のもんだったし。
だからこそこの特別なキスが病み付きになって、俺を離してくんない。
あーいらつく、マジでいらつく。
そっと首に噛み付いたら名前は焦ったように俺を押しのけようとした。
そりゃそうだろう。痛みを感じるように噛んだんだから。


『んん…ジロー…ちょっと…いた…い。
ちょっと…待って。』

「待たない。」

『ねえ、どうしたの?』


ふいに名前が俺の顔を覗き込んでそんな事を言う。
どうしたの?なんてひっでえなあ。
そうやって俺の事気にして心配してるみたな素振りみせちゃってさ。
それが一番しんどいんだって。こいつは知らない。


『…何で、泣いてるの?』

「は?俺泣いてなんか…ねえ…し。」


ふいに頬に生温い感触が這ったのを感じて俺は自分でも驚いていた。
今泣くとかありえねえって。だってまるで女みたいじゃん。
前に俺が適当にしてた時の女の子みたい。
いきなり泣き出してみたりしてさ。そん時、すっげえうっぜーって思ったんだったなあ。
じゃあ今名前も多分そう思ってんだろう。
そう思うと余計に涙が止まらなくなって焦ったように名前が指先でそれを一つ一つ掬いとって行く。


『ねえ、ジロー。悲しいの?』

「…わかんない。なーんも。はは、情緒不安定ってやつー?
マジマジ勘弁ー。」

『…後悔…してる?』

「んな事言う暇あったらさ、続きしてよ。」

『…でも。』

「…お願いだから、してよ。」


名前の肩に手をかけて項垂れた俺に名前はそっと顔を上げさせて俺に顔を近づけて至近距離で俺の目捉えた。ぼやけた視界で見ても思うんだけど、こいつかわいいなって。
ねー、もしさあ。俺が付き合おうってアイツより先に行ってたら全部俺のもんだった?
もし、さあ。俺が好きだなんて言ったら俺のもんだけになってくれんの?


『ジロー、泣かないで。』

「…泣きたくて泣いてんじゃないCー。
お願いだから、続きしようよ。
そんで、あいつの事今だけでいいから忘れて。」


俺がそう言うと、名前は何かを諦めたかのように俺にそっとキスをして
おぼつかない感じで何度も俺を確かめるように舌を絡めて来た。
へったくそ、けど死ぬ程気持ちいいじゃん。
ああ、あのさあ。何が間違えてたとかもうどうでもいいからさ。
今だけは俺の事考えてよ。
そんで、忘れてよ全部。

ふいに俺の顔に生温い水滴が当たったのを気付かないフリをして俺は名前を押し倒した。
ねえ、泣いてよ。俺の事考えて泣いてよ。
もうそれだけでいいから。



end

magnet ボカロ






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