イタチと話さなくなってから、二ヶ月が経った。いろいろ考えてはみたけれど、結局、私にはイタチをどうする権利もないし、どうすることもできないのだから、今はもう気にせずに日々を過ごしている。切り替えが早いのは、しかたがないことだ。むしろ、あの時から感情らしい感情はぜんぶ押し殺して生きてきた私が、ここまで人間らしく戻っただけ褒めてもらいたい。もっとも、かつて人間らしかったのはイタチのおかげで、そういう意味でも、イタチは私の特別なのだろう。
「イタチのこと、嫌わないでやってくれ」
だから、サスケにそんなことを言われる必要は、ましてや頭を下げられる必要などどこにもないのだ。この春、中学校に入学したのを期にイタチ兄さんと呼ぶのをやめた彼は、あの時、あんなことがなければこうなっていたのだろうという姿そのままに成長している。優秀な兄の背中を追う弟が、何を思ってこんな行動に出たのか、私にはわからない。
「イタチが今しようとしてることは、きっとあんたのためなんだ。だから、待っててやってほしい」
けれど、サスケがあまりにも必死にそう言うから、私はまだ自分よりも低い位置にある彼の頭を撫でて頷く。
「わかった。いいよ、待ってる」
了承するや否やすぐに避けられたのは、たぶん照れているから。立ち去ろうとする後ろ姿に声を掛けると、振り向いた耳はほんのりと赤い。イタチに似ず、素直で子どもらしい子だ。
「ねえ、サスケ、もう姉さんとは呼んでくれないの?」
そう問うと、サスケは怒鳴るような返事を置いて、今度こそいなくなってしまった。