ソファーに丸まった小柄な人影を見つけて近づいてみると、ぱちりと開く大きな目。こんにちは、と挨拶すると、こんにちは、とまだ眠気の残る挨拶が返ってくる。今日は折紙先輩と一緒ではないのか、と彼女と仲の良い彼のことを、ふと考えた。
「あ、そういえば、バーナビーさんのインタビュー読みましたよ」
ついこの間発売された雑誌の名前をあげて、なまえさんは言う。理想のデートだとか、なんとか、そんな内容だった気もするけれど、正直なところあまり覚えていない。
「だけど、あれですね、バーナビーさんにあんな感じでエスコートされたら、思わず惚れちゃいそうです」
無防備に笑うなまえさんの言葉に思わずドキリとして、それをごまかすために下がりかけた眼鏡を直す。ヒーローをやっているときとはまったく違った、隙だらけの彼女。僕ばかりが意識しているようで、二人きりで話すのは、本当はあまり得意じゃない。好き、なのだ、たぶんずっと以前から、彼女のことが。
「惚れてしまえばいいじゃないですか。好きになってください、僕を」
口をついて出たセリフは紛れもない本心で、たいした声量ではなくとも、なかったことにするのは難しい大きさで、僕となまえさんしかいないトレーニングルームに響いた。そんなことを言うつもりはなくて、まるで告白だと気づいた途端、顔に血が上ってくるのを感じる。おそるおそるなまえさんを見ると、数度の瞬きのあと、徐々に赤くなる頬。
「あ、あの、バーナビーさん、それは……」
「告白だと思っていただいて、構いませんよ」
しどろもどろになってこちらを窺う彼女に、かえって落ちついた僕は、微笑んでみせる余裕までも取り戻して答えた。意に沿わない告白ではあったけれど、これで僕のことを意識してくれるなら、それはそれでいい。そして、いつか僕のものになればいいと、そう思った。