Eden


四月、私は神奈川にいた。父親の転勤がちょうど私の高校進学と重なって、どうせだからとこっちの高校を受験したのだ。しかし、誰一人知り合いのいない新天地での新生活に心踊らせる私が高校の入学式で目にしたのは、他の生徒よりも頭ひとつ飛び出ている見慣れた金髪だった。

「なんで黄瀬がいるの」

回れ右して逃げようとしたのに、目ざとく気づいた黄瀬に捕まり、私はしかたなく立ち止まった。すれ違う女生徒たちの視線が痛い。

「え!?俺を追ってきてくれたのかと思ったのに違うんスか!?」

「海常にいるなんて知らなかった」

「俺何回も言ったっスよね!?」

きゃんきゃんとうるさい男である。両手でしっかり耳をふさいで、あーあーあー聞こえません。そんなことをしていたら、黄瀬が涙目になった。高校生にもなって恥ずかしくないのか。

「聞いてなかった。どうして海常を選んだか自分でもよくわからなかったけど、きっとそのサブリミナル効果」

本当に記憶がない。それはもう、きれいさっぱり。どうせ私が新居に移る上での準備とか、受験勉強とかでてんやわんやしているときに推薦合格の自慢でもしてたんだろう。想像しただけで腹が立ってきた。

「そこまで聞いてなかったんスか」

黄瀬があからさまに、これ見よがしに肩を落としているけど、正直私は悪くないと思う。
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テーマ「人外ファンタジー」
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