Eden


「この任務が終わったら、結婚しないか」

真剣な顔をしてそう言ったイタチに、私はちょっと呆気に取られてから、小さく頷いた。暗部の面越しだというのに、たぶんイタチは私が間の抜けた顔をしたことに気づいている。それにしても、この任務が終わったら、なんて。セオリー通りにいくならば、この先には悲劇が待ち受けているに違いない。こういう場面でプロポーズをした男と女は、幸せになれないと相場が決まっているのだ。私たちの場合はどちらも十三歳なのだから、少しくらい大目にみてもらえないだろうか、というのは私の希望的観測である。


うちはの居住地近くでイタチと別れた私は、門を越え、里から少し離れた場所で彼を待った。ああ、こんなに受けるのを拒否したかった任務もはじめてだと、木々に遮られた満月を見上げながら考える。イタチはこの任務が終わったらと言ったが、明確な終わりがないことなどわかりきっていた。彼はすべての罪を被って里を抜け、私はここで彼を止めようとしたふりをして、この一件と無関係なことを証明しなければならない。共謀者の疑いをかけられる可能性がある程度には、ついでに言うと、プロポーズをされる程度には、私とイタチは親しかった。


「すまない、待たせた」

まるで逢い引きでもしているかのようなイタチの言葉に、首を振ることで応える。それらしい、実力の拮抗した忍者同士が戦った痕跡は準備しておいた。あとは私がここに伏していれば、ひとまずはいいだろう。

「なまえ」

イタチの手が伸ばされて、私の面を取っていく。そして、そっとキスをされた。至近距離にある目は、真っ赤な写輪眼。沈んでいく意識の中で口にした愛してるは、彼に届いただろうか。願わくは、セオリーを裏切る結末が、彼と、それから私に、訪れますように。
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