Eden


今日は寒い日になりそうですと、綺麗な笑顔を貼りつけたお姉さんがテレビ画面の中で言う。それを横目に、私は厚手の黒タイツを履いてコートを羽織り、仕上げにチェックのマフラーをぐるぐると巻いて外に出た。吐いた息が白くて、雪が降るかもしれないなあと思う。そういえば、去年買った毛糸のスパッツはどこにしまったっけと考えながら、いつもよりも早足で通学路を歩いた。寒いと背筋がぴんと伸びてしまうのは、どうしてなのだろうか。


放課後になっても、空気は相変わらず冷たかった。朝と同じようにぐるぐる巻きにしたマフラーに顔をうずめてみても、寒いものは寒い。足早に校門をくぐろうとして、この寒いのにそんなところに立っているタミヤを見つけた。

「どうしたの、タミヤ。そんな薄着じゃ寒いでしょ」

そう、タミヤは学ランの中にカーディガンを着て、それからいかにも適当に巻いただろうマフラーを首に引っ掛けているだけなのだ。見てるだけで寒い。

「待ってた」

右手をポケットに入れてタミヤが歩き出したから、私は慌てて追いかけて、外気に触れたままのタミヤの左手に、手袋を外した自分の右手を重ねる。ついでに外した手袋をタミヤに押しつけたら、手を繋いだまま、手袋の端を口にくわえて器用にはめていた。毛糸が伸びてなんだか不格好だけど、タミヤの手が冷たくならないならまあいいかと、気にしないことにする。

「お、雪だ」

タミヤがそう言ったから、私はぱっと空を見上げた。ちらちらと舞いはじめた今年最初の雪は、鼻先に、手に、落ちてとけていく。本当に雪が降るとは、私のカンも捨てたものじゃないなあなんて、隣を歩くタミヤに気づかれないくらい、小さく笑った。
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