のどの奥で、炭酸がしゅわりとはじけて消える。夏だ。一緒に買ったラムネをとっくに飲みほしたタミヤは、飲み口の穴を覗いている。カラリ、ビー玉が鳴った。
「あっついねえ」
タミヤはてのひらで顔の辺りを扇いでいたけれど、さほど効果はなさそうだ。いつもいちばん上が開いている白いシャツのボタンは、いまは三つめまで開いていた。学生服の黒いズボンが暑そうだと、私はまとわりついてくるセーラー服のスカートを払いながら思った。
「また、はしたないって怒られるぞ、それ」
瓶を自分の隣に置いて、タミヤが言う。その辺りのコンクリートに、水滴が滲んだ。
「大丈夫だよ、タミヤしか見てないし」
「あー、まあな」
1メートルくらいの高さのコンクリート塀に寄りかかったまま、私はそこに腰かけているタミヤを見上げる。ふと、汗で濡れた首筋が、いつの間にか男らしくなっていることに気づいた。徐々に丸みを帯びて女らしい体になっていく私のように、タミヤもまた、男になっていくのだ。そんな当たり前のことが、私には大発見のようにさえ思えた。
「これあげるから、ヒミツね」
半分くらい残ったラムネを、私はタミヤに差し出す。柔らかさを失いつつある大きな手が、それを取っていった。冷たいラムネのなくなった私の手は、すぐに夏の陽気にあたためられていく。
「お前、ぜったい飲みきれなかっただけだろ」
そんなことを言いながらも、タミヤは瓶を傾けた。ビー玉がまたカラリと鳴って、それから、流れてくる液体にのまれる。瓶の中身が減るたびに上下するタミヤの喉仏が、やけに生々しく私の目に映った。