ウエスト辺りに巻きついた、ムダに長い腕が私を締めつける。シャープな顎を乗せられた頭のてっぺんも地味に痛い。無造作に投げ出された脚の間はなかなか快適な居場所だったのに、タミヤはあまりお気に召さなかったようだ。しかたなく、読んでいた文庫本を膝の上に置く。
「なーに、タマコちゃんはよくて私はダメなの?」
手首の辺りを叩いてギブアップのアピールをしたのに、腕の力が一層強くなった。内臓が出ちゃいそう。なんていうのは、もちろんただの冗談だけど、込められた力は意外と強い。
「妹と彼女は別物だろ。ほら、本とかどうでもいいから俺をかまえよ」
本が取られたかと思ったら、それはキレイな放物線を描きながら座布団に着地した。どうやら今日は甘えたい気分らしい。普段は文句なしにかっこいいタミヤは、たまにこうして随分とかわいらしくなる。
「しかたないなあ」
さっきまで丸めていた背筋をぴんと伸ばして、少し遠かった鼻先にキスをしたら、お返しとばかりに唇にキスが降ってきた。