真っ暗な部屋のベッドの上、窓から射し込む月明かりだけが、ぼんやりと室内を照らしている。以前、彼がこだわっていると言っていた間接照明も、どうやら今日は役にたっていないようだ。湿ったままの髪はシーツに散らばっていて、グリーンの瞳は今は見えない。ひとりで眠るには大きなベッドに、小さく丸まって寝るバーナビーの姿なんて、数多くいる彼のファンの誰も知らないだろう。そのことに、僅かばかりの優越感を抱きながら、そっとベッドに腰かける。ぎゅっと瞑られた目を、長いまつげが縁取っていて、羨ましいと思うと同時に悔しかった。私がこんな不機嫌そうな顔をしていたら、声をかけてくる男なんてたぶんいないのに、バーナビーは少なくとも幾人かの女に声をかけられて、その十倍くらいの人に熱のこもった視線を向けられるのだ。
「やんなっちゃうくらい美人なんだから」
そう一人ごちて、バーナビーの頬に手を伸ばす。目元を半分くらい覆っていた髪をはらうと、バーナビーは身じろぎをして、さっきよりももっと背中を丸めてしまった。ふと、きつく結ばれていた唇が、私の名前を形づくったことに気がついて、嬉しくなる。
「おやすみ、バーナビー」
孤独で寂しがりな彼が、せめて幸せな夢を見られますように。