Eden


目が覚めると、ベッドの横に何かがいた。よく見るとそれはみょうじで、そういえば眠る前、最高に体調が悪かったときにメールを送ったような気がする。それにしても、まさか起きたら部屋にいるとは思わなかった。これでも、体がだるくなかったら飛び退いて壁に頭をぶつけていたかもしれない程度には驚いているのだ。みょうじはベッドを背もたれにしてケータイを弄っている。見舞いに来たんじゃねぇのかヨ、と髪でも引っ張ってやろうとしたら、スプリングが鳴ってしまい、その音でみょうじがこっちを向いた。

「起きたんだ、大丈夫?」

みょうじの手が伸びてきて、額に触れる。汗ばんだそこに、ひんやりとしたみょうじの体温は心地よかった。

「うわ、けっこう熱あるじゃん。食欲は?」

「……なまえチャンが作ってくれるなら食うけどォ」

痛む喉から絞り出した声は、予想以上に弱々しくて、いっそ笑える。正直、食欲はほとんどないが、何も食えないほどではなさそうだ。

「わかった。それ貼ってこれ飲んであったかくして待ってなさい」

どうせ一蹴されるだろうと思っていたのに、オネダリは意外にも聞き入れられた。それ貼って、という言葉と共に投げ渡された冷えピタと、これ飲んで、という言葉と共に押しつけられたスポドリを両手に、オレはみょうじの後ろ姿を見送る。離れていく温度が名残惜しいのは、風邪のときは心細くなるとかいうアレのせいに違いない。
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