Eden


最近親しくなったアラキタと、その友人だというキンジョーくんと、流れでファミレスに行くことになった。アラキタとはなんとなく気が合うし、キンジョーくんはいい人っぽい。部活やサークルに所属していない私は、まさか同じ学部以外の、それも運動部の男と知り合う機会があるとは思ってもみなかったから、正直この展開に驚いている。何が縁になるかなんて、わからないものだ。二人とも自転車競技部とかいう聞いたこともない部活に所属しているらしく、確かに自転車も、自転車に乗る姿もカッコいい。さらには去年のインハイ優勝校のキャプテンと準優勝校のレギュラーだったというのだから、なんだかよくわからないけれどすごい人たちのようで、それにも驚いた。彼らからすると、自転車競技、つまりロードレースを知らないで、有名メーカーの自転車に乗っている私の方が珍しいみたいだけど。たかが通学用の自転車にしては、とんでもなく高価なものを買ってしまった自覚があるだけに、ちょっと肩身が狭い。
ほんの少しの上り坂と下り坂、それ以外の平坦な道を十五分ほど走ると、目当てのファミレスに着いた。坂はわりとキツかったけれど、急な坂だらけの地元に比べればなんてことはない。ママチャリで山の上の自宅から別の山の上にある学校まで通った高校三年間は、確実に私の脚力を強化した。愛車もママチャリからクロスバイクへと進化した今、あの程度の坂は私の敵ではないのだ。
四人掛けのボックス席に通され、注文を済ませる。頼んだ料理は意外とすぐ来て、無料クーポンのソフトドリンクで時間を潰すまでもなかった。私はミートスパゲティをフォークで巻き取りながら、ハンバーグをつつくアラキタとミックスフライのエビを口に運ぶキンジョーくんを窺い見る。

「で、どうだった?けっこう普通に乗れてると思うんだけど」

買ったばかりの頃は、うまくバランスを取れなかった。それだけに、現役自転車競技部員の評価は気になる。ヘタとか言われたらしばらく立ち直れないかもしれない。

「ああ、問題なく乗りこなせていると思うぞ。特に上り坂は、動きの無駄があまりなくていい」

「ま、悪かねぇんじゃねーの」

丁寧で優しいキンジョーくんと、雑でぶっきらぼうなアラキタ。言い方は違えど、思ったよりも高評価をもらえて、ついつい頬が緩みそうになる。それをごまかすように、キレイに巻けたスパゲティを口に運んだ。
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