Eden


変な女と知り合いになった。オレの、お世辞にもいいとは言えない目付きに怯みもせず、まっすぐに見つめ返してくるようなやつだ。六法を持っていたから、おそらく、法学部。そう思って全学部共通の教養科目のときに探してみると、二、三個講義が被っていた。その幾つかの講義のとき、なんとなく話しかけたり、話しかけられたりしてるうちに、そこそこ親しくなった、はずだ。高校時代、女イコール東堂のファンかほとんど話すことのないクラスメイトだったオレには、あの女を友人という枠に入れていいのか、よくわからない。


「あれ、アラキタくんだ。おはよう」

二講の物理を終えて金城と外に出ると、駐輪場のところで女に出会った。実は、まだ、名前を知らない。おう、とだけ返すと、近くにやって来て、オレと金城をちらちらと見比べている。オレみたいなのと金城みたいなのが一緒にいるのが不思議なんだろう。このときはそう思ったが、あとから聞くと、金城が同い年か迷っていたらしい。やっぱり、変な女だ。

「はじめまして、アラキタくんの友人のみょうじなまえです」

友人だったのか、とか、みょうじっていうのか、とかオレが考えているうちに、自己紹介を終えた金城とみょうじの間では話が弾んでいる。二人とも人当たりのいいタイプなだけあって、雰囲気は和やかだ。

「とりあえずメシ食いに行こうヨ」

別に、オレそっちのけの会話に疎外感を覚えた訳じゃない。朝メシを抜いたから、いい加減腹がへっただけ。そもそも、今日は午前で終わりだからメシでも食いに行こうと金城と話していたのだから、この提案はむしろ自然な流れだ。

「私、ファミレスのクーポンなら持ってるよ」

そう言ってみょうじがサイフから取り出したのは、オレたちが行くつもりでいた店のクーポンだった。だが、その店は、徒歩で行くには少し遠い場所にある。

「みょうじさんは、バス通学か?」

「自転車だけど、このお店、そんなに遠いの?」

どうやら、店の場所を把握していなかったらしい。まだ入学して一ヶ月も経っていないのだから、まあ、当然といえばその通りか。オレたちだって、たまたま走るコース上にあるから知ってるようなもんだ。

「自転車あんなら大丈夫だろ」

「では、各自、自転車を持って正門前に集合だな」

最後はなぜか金城が仕切って、一度解散ということになった。
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テーマ「人外ファンタジー」
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