Eden


大学から徒歩約五分、駅のすぐ近くにあるコンビニは、ことあるごとに私たちを誘惑してくる。ちなみに今日はからあげ一個増量中の文字が原因だった。からあげ、というか肉全般を好む荒北がそれにつられて自転車を止め、一緒に帰る途中だった私も当然止まる。コンビニの戦略に踊らされている気がしてどうにも釈然としないけれど、結局、私と荒北は増量中のからあげを片手にコンビニを出た。ちなみに味は、荒北がプレーンで私が唐辛子だ。

「そっちも一つちょうだい」

違う味を食べているとなると、どちらも食べたくなるのは人の性だと思う。腕を伸ばして、荒北のプレーンの容器に勝手に唐辛子味を入れることには成功したものの、さすがに了承を得ずに奪うのはよろしくないとお伺いを立てる。だが、こちらを見てにやりと笑った荒北に、嫌な予感がした。

「いいぜ。ほら、食えよ」

つまようじに刺さったからあげが、目の前で揺らされる。これは、つまり、あーんというやつではなかろうか。いくら相手が荒北でも、外でやるのは憚られる行為だ。たとえ、周囲に誰もいなかったとしても、だ。しかたがないから、プレーンは諦めて唐辛子を取り戻そうと口を開いた、そのとき。

「遠慮してんじゃねぇヨ」

容赦なく放り込まれたからあげを、うっかり丸飲みしそうになって、私は慌てて下を向く。幸いにものどの奥に入ることはなく、なんとか普通に咀嚼して飲み込むことができた。

「うまかっただろ」

悠々と私の唐辛子味を食べながらそう言われ、少しばかり腹が立ったので、脛を軽く蹴飛ばしてやった。痛ぇ、という小さな悲鳴なんて、私には聞こえないのだ。
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