Eden


テーブルに放り出してあったケータイがメールの受信を報せていたので、オレは退屈なテレビ番組からそちらに意識を向けた。チカチカと点滅するランプは個人個人で色を設定できるようだが、面倒でやっていない。つまり差出人も用件もわからないそれを無視する訳にもいかず、ソファーから起き上がってケータイを開いた。

「新開かよ……」

新着メール一件を示すアイコンを押すと、まったく用件の伝わらない顔文字の件名と添付ファイルが画面に映る。何のつもりだ、と多少苛つきつつも添付ファイルを選択すれば、明らかに新開が自分で撮ったであろう写真が一枚。口いっぱいに食べ物を詰め込んだ間抜け面はいい、問題は、その両サイドにいるのが福ちゃんと、みょうじだということだ。背景はどこにでもありそうな居酒屋、並ぶ料理とグラスの量から三人ではない。そこから導き出される結論は、十中八九、合コンだろう。気がつけば、オレのケータイは発信画面へと変わっていた。


「よう、靖友」

一コール、二コール、三コール目の途中で、電話は繋がった。自分でかけておきながら意外な早さに驚いたが、もしかしたら靖友からかかってくるかと思って、と向こう側で新開が笑う。合コン、数合わせ、奢ってくれるっていうから、エトセトラ。とっちらかった新開の話をまとめると、数合わせに連れてこられた者同士で隣の席になったから仲良くなった。それだけのことらしい。

「いいコだよな、みょうじさん。早いとこ捕まえないと盗られちまうぜ」

「そんなんじゃねぇっつーの。ただの、トモダチだ」

「素直じゃねぇなァ」

チ、と舌打ちをしたら、また、新開が笑った。ただのトモダチが合コンに行ったのを知ったくらいで、普通はこんなに動揺しない。わかっている。じゃあ、またな、と言う新開の声が、どこか遠く聞こえた。
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