しばらくの間、幸せそうにお菓子を頬張っていた李玖
周りの気配もまったく見ていなかったため、恭に言われようやっと目的地に着いたのだと知る
視線を窓の外へ向けて目に映ったのは、夕陽で煌めく海
その美しさに李玖は見惚れ、そんな李玖を恭はしたり顔で見ていた
「キレイ……」
「たまには寄り道も悪くないだろ?」
「うん!……でも、何で急に?」
「俺が行動するとき それは俺の欲望、もしくはお前のためだけだ」
欲望に関してはツッコミしたら負けだと思うけど、きっぱり言われたためいっそ清々しい
でも、恭の「お前のため」発言には赤面するのを止められない
「………自分で言ったことなのに覚えてないのか」
「え……」
――時を遡ること3日前の夜――
恭特製の夕飯を食べ終わり、李玖は自分の部屋でゆったりと雑誌を読みながら寛いでいた
ちょうど夏特集のページを見てる時 お風呂に入るよう促すために恭は李玖の部屋の前へ来ていた
その時に 「海、かぁ………久し振りに行きたいな」と呟いていたのを彼は聞き逃さなかった
――回想終了――
「…………それで連れて来てくれたの?」
「俺が来たかったのもあるけどな」
そんな事を言ったような気がしなくもない、かもしれない
本人ですら覚えてないことなのに、恭はちゃんと覚えていてくれたことが嬉しくて今度は顔がニヤけるのを止められない
「あ、りがと、恭さん………すごい嬉しい」
はにかむような笑顔で李玖は恭にお礼を言う それを見、連れて来て良かったと恭は心底思った
普段からとにかく可愛い李玖だが、今の李玖はいつも以上に可愛い
「もっと海に近付いても良い?」
「入るんなら足までな もう暗くなってきてるから危ない」
「はーい!恭さんも行こっ」
「分かったからそんな引っ張るなって」
靴を脱ぎ、ズボンを膝下までたくし上げてから海に足をつける
波が来たり戻ったりする度に足裏でさらさらと流れていく砂がくすぐったいが気持ちいい
テンションが上がってはしゃぐ李玖は服が濡れるのも気にせずに走り回る
それでも、膝下より深い場所には行かないあたり聞き分けの良い子だ
「………海は満喫出来たかい、お姫様」
「俺は姫じゃないっ …………十分楽しんだよ!」
「そりゃそんだけ濡れてれば、ねぇ……」
遊び疲れて砂浜に戻って来た李玖はだいぶ濡れていた
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