「恭さん、どこ行くつもりなの?」
「着いてからのお楽しみ、だ」
さっきから何度も尋ねるのに行き先を教えてもらえない ご機嫌な恭とは裏腹に李玖はいじけ始めていた
「……退屈なら菓子食べるか?」
「…………………食べる!」
こうなることが分かってた恭はあらかじめ用意しておいた李玖の大好きなお菓子を与える
餌付けされてると李玖も分かってる それでも、甘いものが好きな李玖はお菓子の誘惑に勝てなかった
行き先が気になって、普段から持ち歩いてる小説も集中して読めなくて退屈だったのもあるけれど……
単純なもので、お菓子を食べた瞬間には李玖の頭から『退屈』や『行き先』等が吹き飛んだ
「美味いか?」
ニコニコと笑顔で頷く
さっきまでのむくれた様子など微塵も感じさせない李玖に思わず笑ってしまいそうになる
しかしそんなことをすれば今度は不機嫌になってしまう
―――――この可愛い恋人が怒るなんて滅多にないこと 李玖を知ってる人なら皆同じ様に思っている
………………恭以外の者ならここに『いじける』や『不機嫌になる』というのも付属されるが
李玖がそういった感情を見せるのは恭だけ そしてそれは恭に甘えてる、ということなのだ
だから恭にとって李玖が不機嫌なるのは甘えられてることと同じだから問題はない
むしろ愛しくてしょうがない
が、ご機嫌な李玖をわざわざ不機嫌にする必要もないので気を引き締める
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