あいにくの雨となり、体育は男女合同のバレーボールに変更となった。その準備のため、ポールやネットの設置に苦戦しているところにふと影がさす。 「手伝おうか?」 男子バレーボール部の副部長にそう言われたら断る理由もない。素直にお任せすることにした。 「…スガってさあ」 「うーん?」 器用にくるくるネットを結ぶ指先を眺めながら、ずっと前から思っていたことを吐き出す。 「なんでいつも自分の意見言わないの?」 「え、なに急に。…んー、俺けっこうわがままだと思うけど」 「ハッ、どこが」 間違いなく、一番大好物なものでもほかに欲しい人がいれば譲ってしまうようなタイプのくせに。 スガの奥底を探ろうとじっと目を凝らしても、結局正確にわかったのは泣きぼくろの位置くらいだ。 「菅原くーん!」 ふと向こう側から、こっちこっちと手を振りながら女の子がスガを呼ぶ。手伝ってほしいだけなのか、それとも下心がこめられているのかはわからない。だけどせっかくスガが傍にいるこの空間を壊されたくなくて、気づけば本音がひょっこり顔を出した。 「……行かないでよ」 あの子をとやかく言えないほどの剛速球の下心を、スガはなんなく受け止めてへらりと笑った。 「うん。ここにいるよ」 「嘘、やっぱどっか行って」 「なんだよそれ」 クラスで比較的かわいいと評判の女の子の頼みを無視してまで、わたしの手伝いをしてくれる。行かないでと引き留めたわたしの気持ちを、涼しい顔してどう推し測っているのだろう。 スガ、あんたの本音はどこにある。 きみはオアシスなんかじゃない Title:人間きらい |