たぶん確実に流川くんが好きになっていると思う。 最終議題:好きな人の特別になるにはどうしたらいいか 突然告白されてわけもわからず付き合うようになって。気づけばあれから1ヶ月が過ぎていって流川くんの彼女になって2ヶ月になろうとしていた。 変わったのはわたしの想い。流川くんを知りたいという気持ちから流川くんの一番になりたいと、気持ちはだんだん大きくなっていった。ヤキモチも妬くし、バスケをしている姿を見ればカッコいいと思う。一緒にいたい。そばにいたい。人が聞けば恥ずかしいと思うようなことも流川くんには望んでしまう。 「好きなら普通じゃない?」 「え、」 「いやあたしの友達の話。彼氏にキスしてほしいって思うのって気持ち悪いよね、って相談うけたからさ。」 「あ、そうなんだ」 「だから好きなら当然でしょー、ってあたしは思うんだけど」 「…そう、なのかな」 「そうだよ。好きだから触れたいし、触れられたいんでしょ?」 「…」 「おーい、なまえ大丈夫?」 「う、うん平気」 好きだから触れたいし、触れられたい。本当にそうならわたしは。 「今日もバスケ見に行っていい?」 「え、」 珍しくわたしから部活を見に行く、と流川くんに告げた。先ほどまでとろんとしていた目を見開いてあからさまに驚いたような顔をした。 「別にいーけど」 「じゃあ放課後ね」 ばいばい、と手を振って自分の席にもどる。 すこしでも彼女らしくありたい。流川くんの恋人だと胸を張れるように、恥ずかしくないように。流川くんが一生懸命わたしに伝えてくれた「好き」をちょっとでも返したい。 * ボールが弾む音やバッシュが体育館の床をこする振動が響く。むわりと熱気がこもったその場所で、流川くんを見つめる。 やっぱりカッコいいなあ、とぼんやり眺める。それと同時に女の子にモテることも再確認したりして。 「なまえ」 名前を呼ばれたほうに振り返ると、流川くんがタオルで顔を拭いながらやって来た。 「お疲れさま」 「…ん」 ごくごくと喉を鳴らしてスポーツドリンクを飲む流川くんとわたしに痛いくらいの視線が突き刺さる。 「どうした」 「…いや、あの」 恥ずかしさと気まずさに耳までが赤くなったわたしの顔を覗きこむように見つめてくる流川くんにさらに赤くなる。 「あれ、なまえ」 目の前には友達が不思議そうにわたしと流川くんを交互に見ていた。その目にはどんな関係なの、という言葉が浮かんでいるような気がする。 いつもなら流川くんとはただのクラスメイトだから、と適当な理由をつけてその場から離れていたけどもう逃げないと決めたから。 「じ、実はわたし流川くんと付き合ってるの」 ドキドキと胸が音をたてているのがわかる。流川くんもわたしの言葉に驚いているようで、黙りこんでいる。 つりあわないことも、わたしが彼女として相応しくないことも知ってるけど。流川くんが、好きなんだ。 「そうなの!?うわー、全然知らなかった。おめでとう!」 「…へ、」 「流川くんと付き合ってるなんてすごいじゃん!あとで詳しく教えなさいよ」 それじゃあごゆっくり、とニヤニヤ笑いながら友達はどこかに行ってしまった。予想していた反応と正反対で、呆然とする。 「…初めて俺のこと、彼氏って言ってくれた」 「え?」 「なまえ」 「っは、い」 「俺のこと、好き?」 じっとわたしを見つめるその瞳から逃げだしてしまいそうになる。 ぎゅっと手を握りしめて流川くんを見つめかえす。 「好き、…!」 言い終わると同時に視界いっぱいに流川くんの整った顔がひろがる。唇に柔らかい感触がして、恥ずかしいとか体育館なのにとか思うよりも、ただ単純に幸せだと思った。 まわりからの冷やかしの声が聞こえて、ようやく唇は離れた。流川くんが満足気に笑うのを見て、真っ赤になる。 それでも不思議と後悔はなくて、流川くんが自分の彼氏だとようやく実感を持てたような気がする。 「…もうちょいで部活終わるから、待ってて」 「うん」 好きだから触れたいし、触れられたい。その意味がやっとわかった。 流川くんと一緒にいたい。流川くんのそばにいたい。ぜんぶ全部好きだから、そんな気持ちになる。流川くんだからそんな風に思えるんだ。 090906 |