小説 | ナノ


どうして流川くんがわたしなんかを好きだって思ったんだろう。



議題3:不安を拭うにはどうしたらいいか



ハナから自分がかわいいとか、モテるとか思ってない。だから不思議なんだ。流川くんの周りには綺麗な女の子がいっぱいいるのに、なんでこんな普通でそこら辺にいそうなわたしなんかを選んだのか。
まさか遊ばれてる?もしくは罰ゲーム、とか。自分で考えて自分で落ち込んだ。まあわたしも流川くんが大好きだと胸を張れるほど彼を好きではないけれど。




「今日も見てく?」

「え、あ……うん」


気づけば目の前に流川くんが立っていた。本当はあまり見たくはないのだけどうまく断れる自信もないので頷いておいた。嬉しそうに流川くんが笑うからそれでもいいか、となんとなくわたしもつられて笑ってしまう。ほんわかしたなにか温かなものが胸に広がって幸せだと思う。


「じゃあまた」

「うん」


片手を上げて流川くんはそのまま自分の席に戻っていった。席につくと同時にうつ伏せになって寝てしまった。彼らしい、とくすりと笑う。


「ちょっとなまえ!」

「ん?」


ぐわんぐわんと揺すぶられてわけが分からなくなる。ストップ!と友達の腕を掴んで動きを止めた。


「あんたなんで流川くんと話してんのよ」

「いや、なんでって言われても……」


く、クラスメイトだし?と我ながら苦しい言い訳をすると友達の目がきらりと光った。


「もしかして、流川くんと付き合ってんの?」

「はああああ!?」


大きな声にクラス中が動きを止めてこちらを見ている。流川くんはそのままぐうぐうと熟睡していて気づいていないらしい。
そんなクラスの雰囲気に臆する様子もなく友達はわたしをじっと見つめ続けている。


「つつ付き合ってるわけないじゃーん、あははは」


乾いた笑い声を上げて目は明後日の方向に向いている。冷や汗がだらりと背中をたれた気がする。


「だよねえ、あんたがあの流川くんにつりあうわけないし」

「そうそう」


グサリと突き刺さる。わたしと流川くんとじゃつりあわない。他人の目から見てそうやって映っているのにこれからわたしたち二人が続いていけるわけないんじゃないか。

目の端で流川くんのほうを見ると、いつかの女の子と楽しそうに話していた。寝ている流川くんを起こすのなんて先生にだって無理なのに、あの子にはできた。もしかして流川くんの特別はあの子なんじゃ。あの女の子には他に好きな人がいて、だから流川くんは好きだと言えずにいるとか。どっかの少女漫画みたいな展開をごちゃごちゃと考えてしまう。
イヤだ。とっさにそう思う。流川くんが他の女の子を好きだなんてそんなの絶対にイヤだ。たぶんわたしは、流川くんの特別になりたい。一番になりたい。


090812