小説 | ナノ


「ああ…辞めたい」

その言葉と共に深い深ーいため息を吐いた。
結局土方さんに告げた退職願いは聞き入れられなくていまだにこの悪の巣屈・真選組にいる。なるべく土方さんには近づかないように細心の注意をはらって生活している。

それでもたまに廊下で土方さんに会うと、なぜかニヤニヤ笑われて本当に死にたくなる。鳥肌ハンパない
どうにか貞操は守っているけれどいつ襲われるかと思うと満足に眠ることもできやしない。周りにロクなやつはいないし、ひとりで悩んではため息を吐くの繰り返し。


「よいしょ」

久しぶりの晴れの日ということもあって、大量の洗濯物が風に揺られている。隊服の白いシャツやタオル、着物をせっせと取り込んでいく。
ふと土方さんのことやら仕事のことやら憂鬱なことばかり思い出して、下着を手にしながらため息。

「はあー……」
「俺としてはやはり白のほうがいいが。まあ、オーソドックスだがはずせないだろう。もしくは大人っぽく黒でもいいな。レース付のほうがなお良い」
「あ、あの土方さん…?」
「もちろんこの水色もお前に合っていて俺は好きだけど。…しかしこれ生地が薄いな。2枚で300円というところか?」

気持ち悪いいいい!
パンツの色やら柄についてうんぬん言っている土方さんの存在がありえなさすぎる。以前わたしのその…シャツのに、匂いを嗅いでいたのだってまだ現実味がないし。ていうかあんなに憧れていた真選組副長が変態だというのを認めたくないというのが本音だけど。

「なにしてんすかァァ」
「なにって…パンツ見てんだろーが」
「いやなんでそこドヤ顔!?てかどさくさにまぎれてパンツ懐に忍ばせないでくださいっ」

残念そうに口をとがらせる土方さんは客観的に見ればかわいいし、ほんのちょっと揺らいでしまった自分がバカみたいだけど下着を盗もうとした思考回路は全く理解できない。

「ったく仕方ねェな。……ほらこれやる」

なにが仕方ないのか意味がわからないけどすっと差し出された綺麗なラッピングの袋をおそるおそる手にとる。

「これ…なんですか」
「俺の目に狂いはねェ」

自信まんまんに胸を張る土方さんにげんなりしながら仕方なくリボンをほどく。

「かなりいい生地を使ってる。色はピンクで女らしいぞ。レースもついてるし色気もある」

言われなくても触っただけでわかる。確かに生地はいい、デザインもかわいい。でもそれが紐パンていうのがかなり問題だ

「どうだ?気に入ったか」
「ひ、」
「ひ?」
「土方さんのバカァァア!!」

整った顔の右頬を平手で思いきりひっぱたいて走り去る。そのあとでピンク色の紐パンが風に吹かれていた。