小説 | ナノ


殺すころすコロス!今何時だと思ってんだあの天パ。バカだバカだとは思っていたけど本物のくそ能無し大バカ野郎だ。チッ、と部屋に響くような大きな舌打ちをする。
ふとカチャリとドアの開く音が聞こえた。いつもならでっかい音をたてながら家に帰ってくるはずなのに。それならあいつはもう分かっている、ということだ。よし、八つ裂き決定。


「お・か・え・り」

「ヒイイイイ!」


真っ青な顔をして悲鳴を上げた銀髪の耳をひねりあげる。痛い痛い!と涙目になった銀時を一瞥する。


「あんた分かってんでしょ?」

「な、なにがでしょう」

「今日は何の日よ」

「た、た誕生日です」

「誰の?」

「なまえさまのです」

「聞こえない」

「なまえさまのです!」

「あたし言わなかったっけ?仕事なにがなんでも終わらせて家帰って祝え、って」

「……言いました」

「で、今何時?」

「じ、11時24分です」

「いちいちどもるな!イライラする」

「すみませんんん」


見たところプレゼントらしきものはない。何度も何度もブランドのバッグが欲しいと言ったはずだ。
組んだ足を組みかえるとビクリと肩を揺らしている。その行動ひとつひとつにイラつく。


「なんでこんなに遅れたのか言ってみ」

「へ、」

「あたしとの約束を破って遅れたのにはそれなりの理由があんでしょ」


ただしあたしの納得できない言い訳なら別れるから、と断言するとまたヒイイイ!と悲鳴をあげた。うるさい黙れ。目でそう言うとようやく青白い顔で口を閉ざした。


「なにか言えない理由でもあるのかしら」

「めっそうもないです!」

「なら早く言えば」

「……トを………した」

「はあ?」

「ぷ、プレゼントを買っていました」


そういうとがさがさ自分の鞄を探ってラッピングされた小さな箱をとりだした。どうぞ、と深々礼をしながら手渡されしぶしぶ受けとる。ビリッと勢いに任せて包装紙を破ると小さく叫ぶ声が聞こえたので睨んでおいた。
箱の中にはまたさらに小さな箱が入っていてぱかりとそれを開ける。




「誕生日おめでとう。それと、俺と結婚してください」


箱から出てきたのはキラキラ光る指輪。ちょうどあたしの好きなデザインで気に入ってしまった。
結婚。意識したことなんてこれっぽっちもなかった。それらしい雰囲気があたしたちの周りに流れるわけでもない。本当に急だ、この男は。


「あの、なまえ」

「名前にさんか様をつけろ」

「ごめんなさい。…なまえさん」

「なによ」

「顔、真っ赤ですよ」

「るっさい!もう別れる!!」

「ええええ?!ちょ、待って!」


不覚にも嬉しいと思ってしまった。この、あたしが。



「今より稼げ」と脅されても迫力ありませんよ、未来のマイハニー



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