遠恋シリーズ | ナノ
 


 やっと繋がった





 チャイムが鳴ってから
 楽しそうに坂田くんが
 笑った。出なくていい
 の?と聞くと、よっこ
 いせと何とも古くさい
 掛け声で立ち上がった
 。
 ガチャリと扉が開いた
 途端、人が飛び込んで
 坂田くんの胸ぐらを掴
 んだ。すごい音がして
 よくよく見てみると、
 その人は土方くんだっ
 た。


 「やっぱ土方だ。遠く
 からご苦労様」
 「…てめェ、嘗めた口
 きいてんじゃねェぞ」


 この状況についていけ
 ず、一人キョロキョロ
 してしまう。止める言
 葉すらかけられずただ
 じっと見つめることし
 かできない。


 「すっごい汗かいてる
 よー、大丈夫?」
 「急いで来たからだ!
 いい加減にしろ、この
 バカ天パ!!」
 「いってぇぇー!グー
 で殴っただろ今!!」
 「あ、あの……」


 さすがに喧嘩はいけな
 い、と声をかける。二
 人がこちらに気づいて
 ほんの少しだけ沈黙が
 生まれた。
 ふと土方くんの手が坂
 田くんの胸元から離れ
 、ゆっくり近づいてく
 る。そしていつの間に
 か土方くんの腕の中に
 いた。頭にハテナマー
 クばかりが浮かんで、
 じっと身を固くする。


 「あいつに何にもされ
 てないか?」
 「…大丈夫、だけど」


 切羽つまった声で言わ
 れてどうしたの?とは
 聞けなかった。抱きし
 められた格好のまま、
 しばらくじっとしてい
 た。


 「えーと、一応俺もい
 るんだけど。」


 こほん、とわざとらし
 い咳で坂田くんの存在
 を再確認する。第三者
 がいることに気づいて
 慌てて土方くんと離れ
 ようとする。恥ずかし
 さで顔を赤くしながら
 も、グイと胸元を押す
 。だけどどんなに力を
 入れても土方くんはわ
 たしを離そうとしない
 。


 「土方くん、あの、離
 して」
 「いやだ」
 「でも坂田くんが、」
 「いやだ」


 何を言ってもいやだ、
 の一点張りで困ってし
 まう。そんなわたしの
 気持ちを察したのか、
 坂田くんが苦笑いをこ
 ぼした。


 「へいへい、邪魔者は
 消えますよー」
 「…さっさと行け」
 「人の家でそれ以上い
 ちゃこらすんなよニコ
 チン野郎」


 捨て台詞を吐いたあと
 、坂田くんが視界から
 消えた。遠くからドア
 の閉まるような音が聞
 こえたので、おそらく
 どこかに行ってしまっ
 たのだろう。
 追い出したような気に
 なり、心の中で坂田く
 んに謝る。




 「土方、くん」


 さっきより少しだけ弱
 まった腕をほどいて距
 離をとる。


 「ちゃんと話したい」


 あの日、土方くんの電
 話口で確かに女の子の
 声を聞いた。それはわ
 たしにとってひどくつ
 らいものだった。だか
 らちゃんと理由が知り
 たい。真実が知りたい
 。


 「好きだから、ちゃん
 と分かりあいたいんだ
 」


 まっすぐと土方くんの
 目を見据えた。もう、
 逃げたりしない。



090622


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