遠恋シリーズ | ナノ
 


 君からの連絡がほしい





 激しい頭痛に目が覚め
 た。額を軽く抑えなが
 らむくりと体を起こす
 。ふと今自分がどこに
 いるのか考えた。昨日
 の記憶を辿っても居酒
 屋から出た覚えはない
 。だとしたらこの部屋
 は一体誰の、どこの部
 屋なんだろう。キョロ
 キョロ辺りを見渡して
 も手がかりはない。


 「お、起きたか」
 「坂田くん…?」


 ぼりぼり頭を掻きなが
 ら坂田くんが目の前に
 立っている。何が起き
 ているのかイマイチよ
 く分からない。


 「あの、ここどこ?」


 掛け布団を胸元まで引
 き上げて顔だけ出した
 状態で尋ねる。右も左
 も分からないこの状況
 で頼れるのは坂田くん
 しかいない。


 「あー、俺ん家」
 「…え?」


 まさか、いや嘘でしょ
 。おそるおそる掛け布
 団を持ち上げて自分が
 着ているものを確認す
 る。幸いにもシャツを
 着ていて、ほっとする
 。


 「変なことしてないか
 ら安心して。居酒屋で
 寝ちゃって俺の家が近
 かったから運んだだけ
 」
 「…」
 「それと、」


 一旦言葉を切り、試す
 ようにわたしを見つめ
 る。坂田くんの整った
 顔に、不謹慎にも胸が
 高鳴る。


 「土方に連絡しちゃっ
 た」
 「……は?」


 語尾にハートマークが
 つきそうな言い方に思
 わず肩の力が抜ける。
 ていうか、土方くんに
 連絡!?


 「いやー、気まずい雰
 囲気を解消しようと思
 ってね?」
 「ちょ、何、どゆこと
 ?」
 「どうなるか楽しみだ
 なぁ」


 ニヤニヤと笑っている
 坂田くんに頭がついて
 いかない。そんなこと
 したら土方くんが心配
 する。そう思ったと同
 時に気づいてしまった
 。土方くんとは喧嘩中
 で、しかも彼には他に
 好きな人がいる。わた
 が坂田くんとどうなろ
 うが、もう関係ないの
 だ。


 「…どうにも、ならな
 いよ」
 「へ?」
 「わたしがどこで誰と
 一緒にいようが、土方
 くんは気にしない」


 ぽろり、と一粒涙がこ
 ぼれて坂田くんの布団
 を濡らす。泣くつもり
 なんてこれっぽっちも
 なかったのに。
 わたしの髪の毛をくし
 ゃりと手のひらで包ん
 で、坂田くんが優しく
 微笑んだ。


 「…そーでもないんじ
 ゃねェの?」


 坂田くんがそう呟いた
 途端にピンポン、とチ
 ャイムが聞こえた。



090615


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