遠恋シリーズ | ナノ
 


 煽る電話





 隣でぐーすか寝ている
 女を見る。起きる気配
 は全くなく、苦笑いを
 こぼした。周りではど
 んちゃん騒ぎをしてい
 るが、この場だけは静
 けさがある。
 まさか合コンで同級生
 に会うとは思わなかっ
 た。しかも元片思い相
 手。未練がないと言え
 ば嘘になるがこいつが
 土方と付き合っている
 のは当時から知ってい
 るので今さらアプロー
 チしよう、などとは思
 っていない。

 テーブルに置いてある
 淡いピンクの携帯が震
 えている。のんきに寝
 ているこいつの物だろ
 うと放っておくが、震
 えが収まる様子はない
 。いたずら心が大きく
 なり、携帯を手に取っ
 て通話ボタンを押した
 。


 「もしもーし」
 『……お前誰だ』
 「やだ多串くん、同級
 生の名前忘れちゃった
 の?」
 『さか、た?』
 「あったりー」


 電話越しでも分かるイ
 ライラした声に思わず
 頬がゆるむ。これはか
 らかい甲斐がありそう
 だ。


 『なんでお前が』
 「なんでって一緒にい
 るからに決まってるじ
 ゃん」
 『…どういうことだ』
 「今俺の隣ですやすや
 気持ちよさそうに寝て
 るよ、土方の彼女。」
 『てめェ…!』


 電話の向こう側で土方
 がキレているのが手に
 とるように分かる。途
 端今どこにいやがる、
 と怒鳴られた。


 「居酒屋でお酒呑んで
 たら、寝ちゃってさ」
 『…』


 どうやら土方は俺の家
 でにゃんにゃんしたと
 勘違いしたらしい。ま
 ァ、そういう風に思わ
 れるように言ったんだ
 けど。


 「でもいつまでもこう
 してる訳にはいかない
 し、これから俺の家連
 れてくわ」
 『あ?』
 「土方はすぐ来れない
 だろ?だったらしゃー
 ない」
 『…』
 「あ、一ついいこと教
 えてやるよ」


 にやりと自分でも意地
 の悪いと思う笑みを浮
 かべた。





 「俺ずっと前から好き
 だったんだ、こいつの
 こと」


 土方が何を言うのか聞
 かずに、ぶちりと電話
 を切った。
 お前はまだ分かってな
 い。距離がどれだけつ
 らくて、厳しいものか
 。こいつがどれだけお
 前を想っているか。土
 方が思ってるほど、甘
 くはない。



090604


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