遠恋シリーズ | ナノ
 


 震える携帯と気持ち






 ぶるる、と携帯が机の
 上で震える。チカチカ
 光るのを見るのはもう
 何回目か。土方くんへ
 の電話を断ち切られて
 から数分後、メールや
 ら電話やらが続いてい
 る。相手はもちろん土
 方くんなのだけど、携
 帯を取る気には到底な
 れない。ただじっと携
 帯が震えているのを見
 ていた。

 こんなことは生まれて
 初めてで、どうすれば
 いいのか分からない。
 まるで漫画みたいだな
 あ、と他人事のように
 ぼんやり思う。



 浮気


 この二文字が頭の中に
 浮かんでは消える。土
 方くんに限って、と打
 ち消そうとするもうま
 くいかない。男は浮気
 する生き物だ。何度も
 耳にした言葉がよぎる
 。はあ、と大きくため
 息を吐いてクッション
 に頭を埋めた。




 今日遊ぼう、と友達に
 誘われて駅前まで来た
 。待ち合わせ時刻を過
 ぎてもまだ姿は見えな
 い。


 「ごめん、遅れた」


 パタパタとこちらに走
 ってくる友達を見て目
 を見張る。彼女の後ろ
 には四、五人の男がぞ
 ろぞろ歩いて来る。


 「…まさか合コン?」
 「あたりー」


 最近彼氏のことで悩ん
 でたみたいだからさァ
 、と言う友達の言葉に
 意識が少しだけ遠のく
 のを感じた。
 合コンに参加するのは
 初めてで少しだけ緊張
 する。新学期やクラス
 替えでかなり緊張する
 方で、初めて会う人と
 話すのはあまり得意じ
 ゃない。だから当然合
 コンなんてものに参加
 したいと思わなかった
 。

 自己紹介しようの一言
 でそれぞれが少し恥ず
 かしそうにしながら話
 し始める。自分の番を
 終えて、火照った頬に
 手を当てる。ひやりと
 した温度が気持ちいい
 。




 「坂田銀時でーす。甘
 いもの大好きでいちご
 パフェが一番好きです
 。よろしくぅー」


 やる気の無さそうな声
 に自分の耳を疑う。声
 が聞こえた方向を見る
 と見慣れた銀髪がにや
 りと笑っていた。



090510


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テーマ「人外ファンタジー」
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