遠恋シリーズ | ナノ
 


 きみの居場所になりたい



 



 「…はあ」
 「なーに浮かない顔し
 てんの。彼氏に会った
 んじゃないの?」
 「そうなんだけど、さ
 。」
 「…ははーん、なんか
 あったね?」


 ニヤリと笑う友達にま
 たため息が落ちる。
 久しぶりに会った彼氏
 が少し変わっていて寂
 しくなった、なんて子
 どもみたいな理由でこ
 んなに落ち込んでいる
 なんて言えない。

 成長していた土方くん
 を見て、置いていかれ
 たような気がした。わ
 たしだけがあの頃に取
 り残されたみたいで。
 ずっと高校生のままで
 はいられない、と痛感
 してしまった。




 「ハイ」


 にこりと笑いながら友
 達に手渡されたものは
 わたしの携帯電話。何
 これ、と質問するとさ
 らににんまりと笑った
 。


 「どーせくだらないこ
 とで悩んでるんでしょ
 ?ちゃっちゃと解決し
 なさい」
 「え、あ」


 開かれた携帯の画面に
 は通話中の文字。いつ
 の間に、と思うほどの
 早業。ていうか土方く
 んの名前いつ知ったの
 ?
 プルル、と呼び出し音
 が鳴る。土方くんと電
 話なんて数えるくらい
 しかしていないため、
 心臓がうるさい。


 『もしもし』
 「あ、土方くん?」
 『おう、どうした?』
 「あの『十四郎、着替
 えどこー?』


 電話越しに聞こえたの
 は確かに女の子の声。
 土方くんが慌てている
 のが分かる。


 『ちょっと十四郎?』
 『…悪い、かけ直す』


 ガチャリ、と嫌な音が
 して電話は切れた。
 女の子と土方くんの声
 が妙に鮮明に耳に残っ
 ている。

 
 「どうした?」
 「………」




 距離には勝てない。
 遠距離になってしまう
 とき、その言葉を思い
 出した。どんなに好き
 でも遠く離れてしまう
 と気持ちも離れていく
 。わたしと土方くんは
 そうなってしまわない
 、と意味もなく確信を
 持っていたのを覚えて
 いる。
 土方くんが離れていっ
 てしまうことがこんな
 に怖いなんて。行かな
 いで、側にいて。まだ
 、繋ぎとめていたい。



090430


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