遠恋シリーズ | ナノ
 


 二度目のさよなら





 そろそろいーい?と何
 ともやる気のなさそう
 な脱力した声が聞こえ
 て慌てて土方くんから
 離れる。小さく舌打ち
 をした土方くんをちら
 りと見て、ドアに駆け
 寄る。ごめんね、と坂
 田くんを迎えるとニヤ
 ニヤした顔でこちらを
 見つめていた。


 「もしかして俺すげー
 いいタイミングで入っ
 てきちゃった?」
 「ぜ、全然!」
 「あははは、顔真っ赤」


 ひとしきり笑ったあと
 、のろのろと靴を脱ぐ
 坂田くんを見ていると
 土方くんがひょっこり
 顔を出した。


 「坂田、俺らそろそろ
 行くわ。邪魔したな」
 「浮気すんなよ」
 「しねェよ!」


 土方くんが荷物をまと
 めている間に、服を着
 替えて玄関に向かう。
 ありがとう、と坂田く
 んにお辞儀をすると照
 れくさそうに頭を掻い
 ていた。


 「またなんかあったら
 来いよ。大学も近いし
 」
 「うん」
 「じゃー、またな」
 「バイバイ、坂田くん」


 ドアにもたれている土
 方くんに不機嫌そうに
 なに話してたんだ、と
 聞かれて適当に濁して
 おいた。本当のことを
 言ったらまた一波乱あ
 りそう。最後に坂田く
 んに手を振ると、めん
 どくさそうにひらひら
 と手を振りかえしてく
 れた。

 それから土方くんに駆
 け寄って揺れている右
 手にわたしの左手を絡
 ませた。急なことで驚
 いたのか一瞬びくりと
 震えたが、すぐに握り
 かえしてくれた。その
 温かさに自然と笑みが
 こぼれて小さく微笑ん
 だ。駅までゆっくり歩
 いていくその道のりに
 は、夕焼けが眩しく光
 っていて思わず目を細
 めた。隣の土方くんを
 こっそり見るとただ黙
 ってまっすぐ前を見つ
 めていた。


 駅に着いて、時間を見
 る。あと少しで電車が
 行ってしまう。繋がれ
 た手を離すのが名残惜
 しくてホームまでつい
 ていく。すべりこんで
 きた電車を目で追って
 強い風を受ける。


 「じゃあな」


 くしゃりとわたしの髪
 を優しく撫でて、その
 手は離れていってしま
 った。ほんのり残った
 温もりを逃がさないよ
 うにぎゅっと手を握り
 しめて閉じこめる。


 「今度はわたしが行く
 から」


 電車へ向かっていく背
 中に叫んだ。涙がぽろ
 りとこぼれて生暖かい
 空気消えていく。


 「今度はわたしが土方
 くんのところに行くか
 ら」

 「だから、待ってて」


 あとからあとから流れ
 るそれを土方くんが拭
 って優しいキスをくれ
 た。


 「待ってる」


 そう言って笑う土方く
 んにまた一粒涙が落ち
 た。



090712


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