ごちゃごちゃ | ナノ
ヨカン

学生時代の目玉の行事といえば、誰に聞いても修学旅行は入ると思う。

我が銀魂高校も修学旅行として沖縄に行くことに決まった。



班決め、と大きく白のチョークで書かれた横に男女混合という文字が。
それを見たクラスのみんなが叫び声をあげた。

「犬のうんこみたいな男共と一緒なんて絶対嫌アル!」

「俺だってまな板共のお守りは嫌ですぜィ」

「…沖田くん、なにか言ったかしら?」

「近藤さん、謝ってくだせェ」

「なんで俺!?」

はやくも不穏な空気が流れはじめた。静かにしろてめえら!という先生の声に、ようやくすこしだけ静かになった。

「俺だってめんどくせェんだからちったあ我慢しろ。わかったらさっさと班決めろ。頼むから揉めたりすんなよー」

首をこきこきと動かしながら気だるげに坂田先生が告げた途端、またみんなの声が教室中に響く。
わたしも神楽ちゃんと妙ちゃんに腕を引かれてとりあえず3人は決まった。だけど大変なのはこれからで。きっと一波乱も二波乱もあるだろうな、と絶賛いがみ合い中のみんなを見てため息を吐く。


「どうせ組むなら銀ちゃんと一緒がいいネ!」

ふと思いついたようにそう言って神楽ちゃんの指差したほうを見ると、高杉くん桂くんのグループに加わる先生がいた。どうやら男子は人数が半端らしく、代わりに先生が入るみたいだ。
まあわたしは女の子が決まってしまえばあとは誰だっていいのだけど。それにどの男子と組んでもきっとなにかしら面倒なことに巻き込まれるのは予想がつく。こっち!とおいでおいでをする神楽ちゃんのほうへと向かおうと足を踏み出した。

がしっ

不意に誰かに腕を掴まれた。

「土方くん…?」

振り返ればいつも以上に眉間にしわを寄せる土方くんがいた。

「どうかした?」

「…いや、その……あー」

普段の土方くんとは違って歯切れの悪い返事しかかえってこない。それに、きょろきょろ視線をさ迷わせていている。
なにか言いづらいことがあるらしい、というのは雰囲気でわかるけど肝心の言いたいことというのがわたしにはわからない。

…あ、もしかして。
さっきの近藤くんと沖田くんとのやり取りを思い出す。

「妙ちゃんのこと?」

「い、いや違」

「近藤くんのことは協力してあげたいんだけどさ…説得は難しいとおも」

「違ェ!」

てっきり妙ちゃんと近藤くんのことをとりもってほしいと言われるのかと思った。フォロ方十四フォローと呼ばれているだけある、なんて感心していたらどうやら違ったらしい。

「ニコチンヤローとなに話してるアルか!はやくこっち来るネ!!」

「う、うん」

「…………か」

「え?」

いよいよ神楽ちゃんが怒りはじめて、そちらに行こうと土方くんの手をゆっくりとほどく。
だけどそれは叶わなくて、ちょっと強くなった力とぽそりと呟いた言葉に足を止めた。

「その、………い、一緒に組まねえか」

目の前にいるのは本当に、あの土方十四朗なのか。剣道部の鬼の副部長と呼ばれ部員からも恐れられている、あの土方くんなのか。
だって顔は真っ赤で(耳まで赤い)切れ長の目なんてちょっと泣きそうに見える。

なんて、わたしも人のことは言えないけど。

「…………うん、いいよ」

「……そ、そうか」

聞こえるか聞こえないかというくらいの小さな声で返事をすると土方くんは口元を手のひらで覆って、そっぽを向いてしまった。だけどその指のすき間からほんのすこし頬が緩んだ様子がわかった。
隠せてないよ、と思いながらわたしも奥底からわきあがるむずむずした感覚に笑ってしまう。

「おい」

「!高杉くん」

「あいつが騒ぐ前にさっさと来いよ」

「あ、わたし」

「高杉」

「あ?なんだよ」

わたしと高杉くんの間に入るように土方くんが立つ。さっきとは違うピリピリとした雰囲気に萎縮してしまう。

「悪ィけど、こいつ俺と組むから」

「は?」

「そういうことだからあいつらにも言っとけ」

「…お前もそれでいいのか」

土方くんのうしろにいるわたしに視線を移してそう問う。
妙ちゃんや神楽ちゃんにはあとできちんと説明しよう。そう決めてからゆっくり頷く。

「わたしも、土方くんとまわりたいし」

「……そうか」

面倒くさそうにがしがし髪を掻いて、最後にまたわたし達をにやりと笑みを浮かべた。

「よかったな、土方ァ」

「うるせえ!さっさと消えろ!!」

後ろからは土方くんの表情は見えないけど、首もとや耳からなんとなくどんな顔をしているかわかる気がする。
たぶんわたしのさっきの言い方がちょっとアレだったせいだと思うけど、あながち間違ってもいないから否定はしない。

「た、楽しみだね」

「…ああ」

背中を向けたままの土方くん。部活での怖いイメージは消えて、いまは新しい土方くんばかり。でもきっとわたししか知らない。

なにかが始まる予感に、胸が高鳴る。きっと、絶対楽しくなるはずだなんて確証もないのにそう思った。




「……まったく、これだからヘタレは困るネ」
「ふふ、ホントね。」
「お妙さん!俺たちも、」
「あらやだ。動物園からゴリラが逃げ出してるわ」
「今のうちに写真撮ってあの野郎をゆするネタにでもするかィ」

「……………どうでもいいけどさっさと班決めてくんね?」




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