ごちゃごちゃ | ナノ
学生高杉と腐れ縁 1


愛には種類があるらしい。言わずもがな情愛や、憎しみの愛、そして慈しみの愛などなど。



「しんすけー」
「あ?」
「ほっぺたに傷ついてるよ。爪痕っぽいやつ」
「女にやられた」
「また?」

わたしの部屋のベッドを占領し、漫画を読んでいるこの男は腐れ縁という存在である。物心ついたころから2人でよく悪さをしては怒られていた。晋助は昔からよく女の子にモテて、決して王子様というわけではないのにバレンタインには机の上にチョコレートがどっさりあった。

「浮気でもしたんでしょ」
「いや、」
「?」
「お前に会うなって言われた」
「は?わたし?」

晋助は無言で漫画をまた1ページめくる。おそらく肯定の意味なのだろう。
状況を推測するに、元カノさんはわたしが気に入らず晋助にそのことを言ってもめた、ということだと思う。

「なんか、ごめん」
「気にすんな。お前ェのせいじゃねえよ」
「だって晋助この前、あいつはなかなか良い女だって言ってたじゃん」

そうだ。以前ぽろりと晋助がこぼしていた。晋助が女の子を褒めたり評価することなんてめったにないからわたしのシワのない脳ミソにもきちんと刻みこまれた。
そんな子と別れさせる原因をつくったのがわたしのせいだと言うのなら、それは本当に申し訳ないと思う。

「それは便利で使いようがあるって意味でだ」
「……サイテー」

そうだ、こういうやつだった。くらりとした頭を抱える。女は使うものであってそれ以上でも以下でもない、と小学3年生のときに豪語していたのを今さらになってから思い出した。

「気をつけないといつか刺されるよ」
「あァ」

くつくつと笑っている晋助を一瞥してため息。絶対わかってないよ、こいつ。

「お前は、俺があいつと別れたほうがよかったんじゃねェのか」
「ハイ?」

なにを言ってるんだこの男は。わたしが嬉しい?晋助と彼女が別れることが?

「なんでそういうことになるわけ。どっから導きだした答えだそれは」
「さァな、お前自身のほうがよくわかってんじゃねえのか」

つくづくわからない。いや、わかりたくないというのがおそらく本音。だってねえ。初恋は実らないって言うし。腐れ縁という関係に不必要でしょう、こんな気持ちは。




「勝手に彼女でもなんでもつくってりゃいいじゃん」

フイ、と顔をそらして真っ白な壁を見る。ふーん、と興味なさげに晋助が返事をしたあと、なにを思ったか携帯を取り出して電話をし始めた。

「あァ、俺だ」
「…?」
「気が変わった。付き合ってやってもいいぜ」

にやりと笑ってわたしを見つめるその目に心が、気持ちが揺れる。ぐらぐらぐら。
一通り話し終えると、プチリと電話を切って携帯をベッドに無造作に置く。

「女できた」
「知ってるよ、見てたもん」「B組の河合って女知ってるか?」
「河合さんって超モテる子でしょ、ショートヘアーの」
「そう、そいつ」
「やっぱ晋助モテるね。今度は大切にしなよ」

そう言って笑顔をつくるのに、心だけはずきずきと痛んで仕方ない。ぎゅっと胸元を掴んでもそれは収まる様子はないみたいだ。




愛には数種類あるらしい。もちろん好きな人に向ける愛や友達に向ける愛、家族愛などなど。
それじゃあわたしが晋助に抱いているこの気持ちは、一体どんな種類の「好き」で「愛」なんだろう。




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