「ただいま」
「おかえ「おじゃましまーす」
ホストでもあるわたしの彼氏とこうして顔をあわせるのは3日ぶり。うきうきとその帰りを待っていると余計なおまけまでついてきたようだ。
「こんにちはー、多串くんの友達の金時でっす」
「多串じゃねェって何度言やわかんだよ」
「まーまー細かいことは気にしない」
「……てめえ」
ふたりの言い合いを呆然としながら聞いていると、いつの間にか金時さんはソファに寝そべっていた。言っておくが金時さんとは初対面で、話したことなんてもちろんない。それなのになぜあんな堂々としているのか。もっとこう…遠慮とかないの?
「あの、トシ?」
「悪いな、あいつ急に家行きたいって言い出して。断ったんだけど」
「いいよ、気にしないで」
内心、ふざけんなくそ金髪!久しぶりにトシに会ってイチャイチャしたかったんだよおおお!!という気持ちだったけどなんとかひきつる笑顔を張りつけてバレないようにした。
「お腹空いちゃったな」
チラチラとこれみよがしにわたしを見る金時にいらいらは増す一方で。ちなみにただいまの時刻は11時14分。ホストという仕事がら、朝帰りは普通だけど今日はさらに遅い。明日からちょっとした休みがもらえるらしく、その分今日はみっちり働かされたようだ。お腹が空く時間にははやい気がするが、嫌だとも言えずに今用意しますねと返事をする。
「おっしゃあ!」
「お前は少し自重しろバカ」
子どものように喜ぶ金時さんの頭を戒めるようにボカリと叩くトシ。わたしの目にはイチャイチャしているようにしか見えない。いや、そんなことはありえないんだけど。
「ありあわせですけど、どうぞ」
「おお!うまそ」
「いただきます」
箸を手にとると早速食べはじめている。いや、ありがとうとかいただきますとか言おうよ。トシはトシでぶちゅぶちゅとマヨネーズかけてるし。ありあわせとか言ったけど本当は昨日の夜から仕込みしたやつなんだけど。もっと味わって欲しいんだけど。
「これ味濃くね?なんか以上に喉かわく」
「…言われてみればそうかもな」
てめええええ!それはそういうモンなんだよ、ていうか作ってもらってその態度はなんだボケ!!
金髪だけならまだしもトシにも文句を言われてさすがに傷つく。せっかく頑張って作ったんだけどなあ
散々文句を言ったくせにぺろりとたいらげやがった。ブーブー言うんなら最初から食べるんじゃねえよ!そろそろ青筋が浮いてもよさそうなくらいわたしの怒りはだんだん頂点に向かっていく。
汚れたお皿を片付けているとススッと金髪がわたしに近づいてきた。
「あの、土方の彼女さん」
「…なんですか?」
「いつも土方から彼女さんの話聞いるけどさァ」
「?」
「そんなかわいくないね」
にこっと笑うこいつがホストだなんて、わたしは絶対に認めない。