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別れ [ 8/29 ]





肌寒さを感じ、目を開けた。いつの間にか寝ていたらしく、空はうっすら暗くなっていた。あんな風に飛び出してきたのだから今さら戻れない、戻ろうとも思わない。もう一度自分の小さな膝をぎゅっと抱え直した。


あたしは未来から来た。というより、これはあたしの夢なのだけど。
今、一番恐れているのはこの夢が終わってしまうことだ。夢は覚めるものだということは痛いぐらい知っているけど、このままでいいと願っている自分がいる。長い長い夢はいつの間にかあたしの心を蝕んで、現実に戻れなくする。ずっとこのままで本当にいいのだろうか。




「っ、名前!」
「やっと見つかったか」
「無事か!?」


わさわさと草をかき分けて、銀時・晋助・小太郎の3人が泥だらけになった顔で走ってくる。ぽかん、とそれを見つめているあたしに小太郎が頭を下げた。


「すまない」
「…」
「仲間だというのに置いてきぼりにしてしまった。何も言わずに行ってしまった。本当にすまない」
「こたろ、」
「俺も、悪かった」
「銀、」
「ほら高杉も謝れ」
「……悪かった」


寺子屋の中で上位を争う強さを誇る男たちが並んで女のあたしに頭を下げている光景なんて、二度と見れないと思う。普段何があっても絶対に謝らない晋助さえ、あたしに謝った。


「顔上げてよ」
「しかし、」
「もういーから」


ようやく小太郎がゆっくり不安そうな顔を見せた。たぶんこんな顔は、この先見れないだろうな。


「さ、先生のとこに帰ろう」
「おう」
「競争でもすっか?誰が一番速く着くか」
「面白そうじゃねェか」
「あたしも賛成!」
「んじゃあ、行くぞ」




これは夢だ。分かってる。でも、あと少しだけ。あんた達と一緒にいたいんだ
例えこの先にどんな苦難があっても。



いつか来る別れを知っているから




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