昨日 [ 4/29 ]
ぐすっと鼻をすすり、赤くなったであろう目を擦った。みんなが寝ている部屋から出て縁側で一人月を見上げる。
「まだ泣いてんのかよ」
「泣いてない」
隣に腰かけてきた銀時があたしの顔をチラチラ見ている。たぶん心配してくれたんだろう。こいつは昔から憎まれ口を叩きながらもケガをした仲間の治療をしたり、慰めてくれたりした。
「なァ」
「なに」
「なんであの時泣いたんだよ」
「……言わない」
「あっそ」
興味なさそうに返事をして、そのまま銀時はごろりと横になった。あたしはただ黙ってまた月を眺める。
先生にもう一度会うことができて、一体あたしには何ができるんだろう。ここでしたことは未来が変わってしまうことなのか。ぼんやりと考えて、バカみたいだと思う。あたし一人が足掻いたって何も変わりはしない。
「あのね、銀時」
「あ?」
「あたし未来から来たんだよ」
「……は?」
「だから、これから起こることが分かるんだ」
「………」
「驚いた?」
「ついに数少ない脳細胞が死滅したらしいな。御愁傷様」
「そんなこと言うのはこの天パか?あ?」
「いででで!もげるから、頭皮ごといっちゃうから!」
ねえ、銀時。あたしたちの未来はひどく悲しくて美しいよ
どうか昨日よ色あせないでどうか明日よ消えないで
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