ワールド | ナノ
現実逃避 [ 2/29 ]





「…い、おい!」


うるさいなあ。今日は仕事休みだっつの、少しは寝かせなさいよ。


「起きろコノヤロー」
「いった!」


頭に衝撃がはしり、じんじんと鈍く痛む。ガバリと起きあがり、頭を抱えた。




「こら銀時!仮にも名前はおなごなのだぞ、殴るな」
「仮にもってお前が一番失礼なんじゃねーの?」


これは夢、なのか。目の前には銀髪と長髪の子ども、少し後ろにはいかにも生意気そうな男の子。あの頃に戻りたい、と願った時間が今この瞬間この場所で流れている。


「ったく、俺らに方々探させやがって何か奢れよバカ名前」
「…」
「どうした名前」


「ここ、どこ?」



ぽつりと呟いた言葉に唖然とした3人を見て、言わなければ良かったと後悔した。


「銀時、お前が頭なんぞ殴るから記憶が飛んでしまったではないか!」
「え、嘘だろ。今ごろ流行んねーぞそんなん」
「何焦ってんだ天パ」


あわあわと慌てる銀時と小太郎とは対照に一人飄々としている晋助。そうだ、あたしが求めてたのはこんな日々だ。自然と頬がゆるんで笑みをつくってしまう。


「やっぱ嘘かよ、ふざけんな糞女」
「こら銀時、お前はまたそういうことを」
「いいからさっさと戻んぜ。先生が待ってる」


お前は先生大好きだからな、高杉。うるせェ黙れ。
二人が言い争っているのをぼんやりと聞く。そうか、先生はまだ生きてるのか。あの悪夢が思い出されそうになり、慌てて頭の中から追い出した。もしこれが夢なら、過去に戻ってきたというならおもいきり楽しんでやろうじゃないか。

すでに遠くまで行ってしまった3人の背中を追いかけた。



幸せな現実逃避




[*prev] [next#]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -